著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
管理型指導から子どもたちと一緒に問題解決する指導へ
横浜市小学校教諭松下 崇
2017/3/15 掲載
 今回は松下 崇先生に、新刊『自治的集団づくり入門』について伺いました。

松下 崇まつした たかし

1979年横浜市生まれ。横浜市小学校教諭。「教室に自治を!!」を合い言葉に、2013年より自治的能力向上研究会を仲間と共に結成し、活動。自身も悩み苦しむ若者の一人であったが、学級づくりを中心に学び続け、学校現場で日夜全力投球中。
著書に、『学級を最高のチームにする!365日の集団づくり 6年』などがある。

―本書は「THE教師力ハンドブック」シリーズの1冊として、テーマは「自治的集団づくり」です。まず本書の特徴とねらいについて教えて下さい。

「“自治”ってなんだかとてもいいのは分かるのだけれど、具体的な姿が見えてこない」という声が、若い先生を中心に私のもとに届いていました。本書はそんな声に応えるべく、追試可能な実践を提示し、子どもたちをどのように見取り、評価すればいいのか具体的に記しました。問題解決の場面を、問題発見、課題設定、意思決定(話合い活動)、試行錯誤、振り返りの5つに区切り、各章毎に取り上げています。最初から通して読み、ご自身の実践を見つめていただいてもいいですし、「今、まさに困っている場面」から読み進めてもいいように構成してあります。

―表紙に「自分で考え、協力して解決できる力をつけるには?」とあります。発表された答申・学習指導要領案でキーワードとなっている主体的・対話的で深い学びの基盤として必要な力だと思いますが、このような力をつける(自治的集団づくり)には、まずどのような視点が大切でしょうか?

 目の前で問題が起きそうになると、ついついその問題を教師自らの手で解決してしようとしてしまいます。そうすることで目の前の問題は解決しますが、子どもには何の力もついていないので、場面を変えて同じ問題が起きがちです。目の前で問題が起きそうになったとき、教師は問題を解決するのではなく、じっくりと子どもの考えを見取り、適宜質問をしたり、環境を整えたりしながら、子どもたちに解決を委ねることで、着実に力を伸ばしていきます。

―読者の先生方の中には、「そのような力をつけたい」と思われている先生方も多いと思いますが、「何から始めたら〜」という先生もいらっしゃると思います。このような入り方で〜というおすすめがありましたら教えて下さい。

 「今、まさに〇〇の場面で困っている」先生は、本書に示した具体的な実践を追試することをお勧めします。追試しながらたえず指導を修正することで、教師のあり方そのものを見つめるようになります。そうすることで、それが他の指導へとよい影響をもたらすようになると思います。
 「特に今、困っているわけではないけれどやってみたい!」という方は、自分の得意な場面で取り組むとよいと思います。「今までもったクラスは特別自分が指導しなくても掃除をしっかりやっていた」「給食指導については熱く語れる」「子どもたちと理科の授業をしているときが一番楽しい」などの思いがあるところで、子どもたちと一緒に課題を解決すると、他の場面でもその方法で子どもたちと一緒に課題を解決したくなると思います。

―本書の第2章以降では、各章で扱う「問題を発見する力」「課題を設定する力」「話し合う力」といった力をつけるための理論と方法の解説の他に、具体的な活動例が、指導の流れと評価のポイントも入れた「ワーク集」という形でまとめられています。このような活動では先生の言葉がけ・評価が大切になってくると思いますが、どのような構えが必要でしょうか。

 子どもたちに課題解決を委ねるということは、必ず失敗がついてきます。そんなとき、「叱って終わり」ではなく、失敗してもまた挑戦しようと立ち上がるその姿を励ますことが大切だと思っています。
 すぐに結果は出ませんが、じっくりと育てていると、数か月後に飛躍的に成長した子どもたちの姿として、目の前に現れるでしょう。

―最後に、読者の先生方へメッセージをお願い致します。

 今、教師は失敗の許されない非常に厳しい状況にさらされていると感じています。そんな状況は、子どもたちにも間接的に影響しています。ついつい自分の手の内に納めて「大人しいよい子ども」を好むようになってしまいます。そしていつの間にか、管理型の学級づくりになってしまうのではないでしょうか?
 しかしいずれ子どもたちは成長し、目の前の大人の力を飛び越えていきます。その飛び越えるときに何が必要か考え、小学校のうちから丁寧に指導してほしいと思います。
 自治的集団づくりの魅力を知ると、毎日の教師生活が楽しくなります。「明日はどんな課題を解決するのかな」とトラブルが待ち遠しくなります。
 本書を手掛かりにして、教育現場の先生の毎日が少しでも楽しいものになり、さらに自治的集団づくりの議論が深まることを願っています。

(構成:及川)
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