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- 学級経営
「“自治”ってなんだかとてもいいのは分かるのだけれど、具体的な姿が見えてこない」という声が、若い先生を中心に私のもとに届いていました。本書はそんな声に応えるべく、追試可能な実践を提示し、子どもたちをどのように見取り、評価すればいいのか具体的に記しました。問題解決の場面を、問題発見、課題設定、意思決定(話合い活動)、試行錯誤、振り返りの5つに区切り、各章毎に取り上げています。最初から通して読み、ご自身の実践を見つめていただいてもいいですし、「今、まさに困っている場面」から読み進めてもいいように構成してあります。
目の前で問題が起きそうになると、ついついその問題を教師自らの手で解決してしようとしてしまいます。そうすることで目の前の問題は解決しますが、子どもには何の力もついていないので、場面を変えて同じ問題が起きがちです。目の前で問題が起きそうになったとき、教師は問題を解決するのではなく、じっくりと子どもの考えを見取り、適宜質問をしたり、環境を整えたりしながら、子どもたちに解決を委ねることで、着実に力を伸ばしていきます。
「今、まさに〇〇の場面で困っている」先生は、本書に示した具体的な実践を追試することをお勧めします。追試しながらたえず指導を修正することで、教師のあり方そのものを見つめるようになります。そうすることで、それが他の指導へとよい影響をもたらすようになると思います。
「特に今、困っているわけではないけれどやってみたい!」という方は、自分の得意な場面で取り組むとよいと思います。「今までもったクラスは特別自分が指導しなくても掃除をしっかりやっていた」「給食指導については熱く語れる」「子どもたちと理科の授業をしているときが一番楽しい」などの思いがあるところで、子どもたちと一緒に課題を解決すると、他の場面でもその方法で子どもたちと一緒に課題を解決したくなると思います。
子どもたちに課題解決を委ねるということは、必ず失敗がついてきます。そんなとき、「叱って終わり」ではなく、失敗してもまた挑戦しようと立ち上がるその姿を励ますことが大切だと思っています。
すぐに結果は出ませんが、じっくりと育てていると、数か月後に飛躍的に成長した子どもたちの姿として、目の前に現れるでしょう。
今、教師は失敗の許されない非常に厳しい状況にさらされていると感じています。そんな状況は、子どもたちにも間接的に影響しています。ついつい自分の手の内に納めて「大人しいよい子ども」を好むようになってしまいます。そしていつの間にか、管理型の学級づくりになってしまうのではないでしょうか?
しかしいずれ子どもたちは成長し、目の前の大人の力を飛び越えていきます。その飛び越えるときに何が必要か考え、小学校のうちから丁寧に指導してほしいと思います。
自治的集団づくりの魅力を知ると、毎日の教師生活が楽しくなります。「明日はどんな課題を解決するのかな」とトラブルが待ち遠しくなります。
本書を手掛かりにして、教育現場の先生の毎日が少しでも楽しいものになり、さらに自治的集団づくりの議論が深まることを願っています。