- 著者インタビュー
- 学級経営
若い先生方を中心に、子どもとはうまくやっているのに、保護者とうまくいかないという話をうかがいます。また、教師を目指す学生の中にも保護者とうまく関係をつくることができるかについて不安を感じる人は多くいます。近年は、保護者との関係がうまくいかなくなって学級が機能しなくなる保護者発信型の崩壊も少なくはありません。多様化する保護者のニーズに応え、信頼関係を構築するにはどうしたらよいのでしょうか。
本書の第1章では、保護者と向き合うことの意味やその構えについて示しました。また、第2章は、全国の実践家から具体的な実践を挙げてもらっています。その内容は大きく分けて「@各執筆者の基本的な考え方、A保護者と信頼関係をつくることができた事例、B保護者と味方にするための教師の心得」の3つです。
近年、保護者の要求は多様になり、また、少し度が過ぎているような事例も見られています。場合によってはそれを「クレーマー」とか「モンスタ−」などと呼びたくなるのは心情としてはわかります。しかし、保護者がそうなってしまうのは、先生方も重々ご承知の通り、ほとんどの場合、子どもを愛すればこそです。
教師にとっては何十分の一かの教え子の1人かもしれませんが、保護者にとっては一分の一、なのです。要求をのむかのまないかは別としてまず、コミュニケーションをとろうとすることが大事でしょう。コミュニケーション不足が、愛情深い保護者を「クレーマー」や「モンスター」にしてしまうことがあるのではないでしょうか。
通信に対する考え方は、各執筆者によって異なっています。共通していることは、通信を出す側の教師の意図です。「どういうつもりで書いているか」という教師の構えはすぐに保護者に伝わります。その根底に、「保護者とつながろう」という思いと「子どもへの愛」がないものは、多くの保護者は見なくなるでしょう。「年間○○号」と自分にノルマを課したり、自分の記録のために出したりするという教師もかつていました。しかし、保護者の貴重な時間を自分の自己実現のために付き合わせるのはいかがなものでしょうか。相手意識をもって、保護者が読みたくなるような通信を出すことが最大のポイントだと思います。
学級崩壊をしているクラスの中にも学校や教師に協力的な保護者はいるし、不登校の子の保護者すべてが学校に不信感をもっているわけではないと思います。しかし、学級を担任すると学校に対して不信感をもっている保護者が一定数いることは間違いないですね。そういう方々には、誠意を見せるしかないと思っています。本書の第1章にも書きましたが、学級経営や授業づくりをしっかりやることです。そして、子どもたちが「今度の先生、好き」って言うようになれば、保護者の態度は変わることでしょう。また、同時進行で、保護者は学校のことを知りたいと思っていますから、そのニーズを満たすことです。具体的な方法は本書で。
通信を出す構えと同じですが、保護者と「つながろうとする」意志が教師側にあるかどうかです。しかし、本音を伝えるには、やはり多少の技術的なものもあることでしょう。いくつか挙げると、@コミュケーション量を増やすこと、A笑顔で安定していること、B子どものよさを伝えること、などです。保護者を見かけたら必ず声をかけることです。いつも笑顔で談笑し、好意を伝えることです。人は自分を嫌っている人とはつながろうとしません。また、子どものことも好きであることが伝わるようにします。人として認めてほしい、そして、自分の大切にしているものを大切にしてほしいと思っていることは、教師も保護者も同じです。
保護者と向き合うことを「保護者対応」などと言っているうちは、保護者と良好な関係にはなれません。保護者同士が「今年の教師対応どうする?」と話し合っていたら、よい感情はもてませんよね。教師の方からつながろうとしないとつながれないのが今の教師と保護者の関係ではないでしょうか。しかし、保護者を味方にしたら、教師である皆さんにとっては学級経営や授業が相当にやりやすくなりますし、皆さんの自信になることは間違いないです。「保護者との関係が悪くなったらどうしよう」と受け身で心配をするのでなく、「保護者とのよい関係をつくるためには何をしよう」と積極的な態度で臨んだらきっと光が見えるはずです。
本書には保護者と信頼関係をつくるためのアイディアが満載です。皆さんの教育活動に強い追い風を吹かせてくれることでしょう。