- 著者インタビュー
- 教師力・仕事術
子どもたちと関係がつくれない、また、保護者からの信頼が得られないといった悩みは以前からありました。しかし、今、増えているのは職場での同僚や上司との関係に悩む先生方です。そこで、本書では、第1章で職場で良い関係をもつことの意味を考察し、第2章では、小学校10名、中学校10名の実践者から職員同士の人間関係づくりについて、(1)同僚といい関係になるための心得、(2)同僚とうまくやるコツ、(3)合わない同僚とうまくやるコツ、(4)初任者のためのサバイバルテクニックの4点から、実践を示してもらいました。
考えられる要因が多く、また、複雑で、端的に言うことは難しいことですが、最も考えられるのは職員室のコミュニケーション量が減ったことだと考えています。
言うまでもなく私たちは、コミュニケーションによって繋がっています。その量が減っていくと、集団や組織がうまく回らなくなり、下手をすると解体の方向に向かいます。その最も大きな理由は、皆さんも想像がつくように、学校の業務が肥大していることによる多忙化です。また、職員室の世代交代も進み、近年は、職員室が一気に若返っている地域、学校があります。そこに、マネジメントが追いつかないのです。さらに言えば、うまくいっている職員室は、あるにはあるのですが、それは「偶然いい人たちが集まった」というもので、意図的につくられたものや育てられたものではないのです。
ほとんどの大学の教員養成では、学生たちを組織人として訓練するようなプログラムは用意されていません。つまり、教師は、授業者としてのトレーニングを受けていますが、社会人や組織人としての力が育てられているわけではないのです。同僚と協力し合うことや、同僚から学ぶなどの組織人としての基本中の基本が学ばれていない可能性も指摘できます。
先ほどの質問でも少しお答えしましたが、職員室で「いい関係」をつくるためには、職員室でのコミュニケーション量を増やすことです。どんな会話をするか、ではなく、どれだけ会話をしたかが重要です。また、具体例は書籍の中で示されているので、そちらをお読みいただきたいと思います。各執筆者がやっていることにいくつか共通点があります。それは、同僚に貢献していることです。話を聞いたり、助言をしたり、仕事を請け負ったり、です。だからこそ、自分の仕事を早めに切り上げて、同僚といい関係になるための時間をつくるようにします。
非常に多忙な毎日ですが、同僚と良い関係になるために「ちょっとしたアクション」を起こしてみます。すると、何か変化が起こることでしょう。
若い先生方と話していると、授業でも学級経営でもうまくやりたいと強く願っている人が大勢います。それはとても良いことだと思っています。しかし、その思いが強いがために、うまくいかない自分を責めたり、自信を失ったりしているようです。そこで申し上げたいのは、経験が少ないのだからうまくいかなくて当たり前だという事実を受け入れてしまうこと、そして、だからこそ、周りの先生に「教えてください」「助けてください」と援助を要求することだと思います。誠実に支援を求める人を助けようとしてくれる人は必ずいるはずです。セミナーで学ぶ、サークルで学ぶということはとても大事なことですが、同僚の存在を忘れてはなりません。実は、ベテランは頼られることを待っている方もいます。また、頼る人が増えると助ける人が増えるのです。助けを求めることが、あたたかな職場をつくることにもつながります。
チームが成り立つには、「目標の共有」と「役割」、そして「良好な人間関係」が必要です。そうした3つの要因がそろったところに、協働が起こり、その先に成果が待っています。
これはどれも大事ですが、優先順位の一番目は、「良好な人間関係」です。あいさつ、返事、思いやりのある振る舞い、時には同僚の愚痴を聞き、相談し、そして一人で困難を抱えているときは手伝う。こうした日常の積み重ねが、「良好な人間関係」を育みます。チーム学校は、「良好な人間関係」抜きにはあり得ません。
従来の学校は、「職員室の関係づくり」なんてことを大げさに扱わなくても、なんとかなっていました。さらには、職員室がごたごたしていても、地域と子どもたちがしっかりしていたからなんとか教育活動は成り立ったのです。しかし、これからはそういう時代ではありません。先生方が保護者や子どもと向き合うためには、しっかりした応援団が必要です。同僚とうまくいくようになったら、皆さんの仕事は驚くほどやりやすくなります。同僚との良い関係は、必ずや皆さんの教室実践に反映されます。子どもたちは皆さんを見ています。仲の良さそうな先生たちを見て、子どもたちは安心して学びます。仲の良さそうな職員室を見て、保護者も学校に足を向けやすくなります。
良い環境なくして、良い実践なし。本書がこれからを生き抜く教師の必読の一冊であることを確信しています。