- 著者インタビュー
- 特別支援教育
障害のある子の場合は,その障害によって,日常生活や学習場面において様々なつまずきや困難が生じることから,小・中学校等の子と同じように心身の発達の段階等を考慮して教育するだけでは十分とは言えません。そこで,個々の障害による学習上又は生活上の困難を改善・克服するために「自立活動」が設定されています。
「自立活動」は、障害のある子が在籍している特別支援学校、特別支援学級、通級指導教室において特設の「自立活動の時間」として、あるいは教育活動全体を通じて行う「自立活動」として指導されています。
発達障害のある子に対する「自立活動」の指導は、主に通級指導教室で行われます。同じ学校内に通級指導教室が設置されていれば在籍学級の授業を一週間に一回程度抜けて指導を受けます。他校通級をする場合は、週一日、在籍する学校から通って指導を受けます。
通級指導教室では、個々の発達障害の特性や実態を十分に踏まえて個別の指導計画を作成し、指導すべき課題を明確にした上で、自立活動の指導内容や方法を選定して行います。人とのかかわりや社会性に課題が多いため、自立活動の区分では、「コミュニケーション」や「人間関係の形成」を取り扱った指導が多いようです。
学習指導要領に記された自立活動の内容は大綱的に示してあることから,具体的な指導内容をイメージしにくいと思います。そこで、「特別支援学校学習指導要領解説 自立活動編」に記載された内容を整理した「自立活動一覧表」を作成しました。今回、本書の巻末に自立活動の6区分の内、関係する22項目に絞って、「発達障害のある子への自立活動一覧表」を載せました。「自立活動」指導は、本来、各区分や項目を関連付けて指導すべきものですが、読者の皆様に容易に理解してもらえるよう、指導すべき課題で最も重点となる区分と項目と対応させる形で指導事例を紹介してあります。
「自立活動」の指導計画を立てる際、本書は、各区分とそれぞれの項目が示すねらいや意義を詳しく知りたい時、さらには、具体的な指導内容に迷った時に、参考にしていただければと思います。
江東区立小学校に設置されている通級指導教室を担当する先生方を対象にした研修会において、「発達障害のある子への自立活動一覧表」を基にして、各教室の実践がどの区分、どの項目に当てはまるのかのワークショップを行いました。
本書の110のアイデアは、その際に紹介された実践事例をベースに作られています。
現在、発達障害のある子およびパステルゾーンの子たちに対して、日々どのような指導が有効なのか試行錯誤されている先生方が多いことでしょう。新しい学習指導要領では、そのような現状を改善するため、これまで特別支援教育が積み上げてきた障害の重い子への「自立活動」の指導に加えて、発達障害を想定した「自立活動」の在り方を示しています。ぜひ、本書を手に取っていただき、新学習指導要領と共に読み込むことで、自立活動の専門性をより一層、高めてほしいと思っています。
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