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特別支援学校新指「解説」自立活動編を公表―文部科学省
kyoikujin
2009/6/22 掲載

 今月、文科省より 「特別支援学校学習指導要領解説 自立活動編」(PDF)が公表された。解説では、今回の改訂で新設された「人間関係の形成」についても具体的な内容が示されている。

 自立活動は、障害がある子どもの教育課程にのみあり、自立をめざし、障害による学習上又は生活上の困難を主体的に改善・克服しようとする教育活動である。
 今回改訂では、障害の重度・重複化に対応し、発達障害等に応じるために「他者とのかかわりの基礎に関すること」「他者の意図や感情の理解に関すること」「自己の理解と行動の調整に関すること」「集団への参加の基礎に関すること」「感覚や認知の特性への対応に関すること」が加わり、従来5つの区分が見直され、新たに「人間関係の形成」が設けられたのだ。

人間関係の形成

 解説では、障害名とその特性をあげ、具体的にどのような指導が適しているかまで詳しく述べられている。
 例えば「(3)自己の理解と行動の調整に関すること」には下記のような記述がある。

 ADHDのある幼児児童生徒は、状況にそぐわない行動をすることがあるために友達に受け入れられず、集団参加が難しい場合がある。このような場合は、状況に合わせて行動することが自分は不得意であることを理解し、行動する前に周囲の状況を観察したり、状況を理解するゆとりをもつようにしたりする態度を身に付けることが必要である。その際には、ロールプレイのように、できるだけ具体的な状況を設定して指導することが大切である。

 ここであげられているADHDなど発達障害がある子どもは通常の学級にも6%程度いるといわれており、通常の学級の教師にもこれら解説は参考になるだろう。

障害のとらえ方の変化と自立活動

 今回改訂には、2001年にWHOで採択された「国際生活機能分類(ICF)」による障害のとらえ方が反映されている。
 ICFでは、人間の生活機能を 「心身機能・身体構造」「活動」「参加」の3つでとらえており、それらに支障がある状態を「障害」としている。
 指導要領の目標も「障害に基づく種々の困難を主体的に改善・克服」が「障害による学習上又は生活上の困難を主体的に改善・克服」と改められている。指導にあたっては、視覚・聴覚などの「心身機能・身体構造」、食事、排泄、着脱衣、学習などの「活動」、スポーツや部活動への「参加」を改善していくという視点ですすめることが大切であろう。
 また、ICFでは障害を個人の問題ではなく、環境との関係でとらえており、バリアフリー設備等に加え、友人関係や教師の働きかけの重要性もクローズアップされている。
 解説を参照して、障害特性にあわせた自立を目指す指導、そしてユニバーサルにデザインされた学習環境、教師や友人など周囲の人の意識等にも目を配りたい。

この記事は、『きょういくじん会議』の記事を移転して掲載しているため、文中に『きょういくじん会議』への掲載を前提とした表現が含まれている場合があります。あらかじめご了承ください。
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