- きょういくじん会議
去る8月22日(土)、埼玉大学において、日本数学教育学会主催の「算数・数学教育を考える会」が開催された。今回で第6回目を迎えた同会には、各地から算数・数学教育研究者や小・中・高現場教諭が集い、とりわけ若手の現場教諭の姿が目立った。
「わかる」数学授業とは何か?
午前中は、小・中・高各部会に分かれ、授業のあり方についての講演が2本ずつ行われた。
奈良教育大学教職大学院の吉田明史氏は、高等学校における「わかる授業」をテーマに講演を行った。吉田氏は、数学授業において「わかる」ことと「できる」ことは明確に区別して考えなければならず、高等学校においても、「わかる」ということの定義をもっと明確にして授業を構築していかなければならないと述べた。また、「『わかりましたか?』と聞いて反応をみる」「学習したことを説明させてみる」といった様々な項目について,小・中・高で同じ質問をした調査結果の比較資料が示されると、深くうなずいたり、筆を走らせメモをとる参加者が多くみられた。
「数学リテラシー」の観点から新学習指導要領をとらえる
午後は、最初に、椙山女学園大学の浪川幸彦氏による「数学リテラシーの観点から見た新学習指導要領―「数学的活動」と「数学のよさ」を中心に―」をテーマとした講演が行われた。今次の学習指導要領の改訂に大きな影響を与えたと言われる、OECDのPISAにおける「数学的リテラシー」の定義をはじめ、この分野の研究の第一人者である浪川氏が、「数学リテラシー」の考え方を用いた新学習指導要領のとらえ方の観点を示した。
新学習指導要領実施に向けた授業改善の提案
次に、浪川氏に加えて、埼玉大学の野津吉宏氏、群馬大学の江森英世氏が参加して、「新学習指導要領実施に向けた算数・数学の授業のありかた」をテーマに、シンポジウムが行われた。
野津氏は、「数学的な思考力・表現力」をはぐくむための自力解決場面の充実や、練り上げ場面の充実など、新学習指導要領実施に向けた授業改善の具体的な工夫点をあげた。
数学学習における「コミュニケーション」について造詣の深い江森氏は、新学習指導要領において、説明し伝え合うなどのいわゆるコミュニケーションが重視されていることについて、コミュニケーション=話し合い活動や発表会ではなく、そうした個別の活動を重視する前に、まとまらない未整理の思考をつぶやきの段階で大切にしていく必要があると語った。
- 日本数学教育学会
http://www.sme.or.jp/