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オタマジャクシのしっぽはなぜ消える?
kyoikujin
2009/10/26 掲載

「カエルが育つ順に、次の写真を並べなさい」

 昔、一度はきいたことのあるこの問題。カエルの卵、オタマジャクシ、足のはえたオタマジャクシ、カエルといった写真を並べ替えさせる問題で、だれしもが解いたことのある問題ではないでしょうか。
 しかし、なぜしっぽは消えるのか。幼いころ疑問に思っていた人も多いはずです。事実しっぽが消える仕組みは現在まで解明それておらず、長年謎のままでした。

オタマジャクシのしっぽはなぜ消える?

オタマジャクシの尾はどこへきえた (子ども たのしいかがく)

 しかし、10月21日の毎日新聞によるとこの謎は新潟大の井筒ゆみ助教(発生生物学)らによって解明されたそうです。
 オタマジャクシがカエルになる際にしっぽが消える仕組みは、これまでも細胞死など諸説ありましたが、井筒教授らは、「尾が体内で『異物』と認識され免疫反応により拒絶されて消失する」ということを研究によって突き止めました。これは両生類の変態の研究がなされてから、およそ100年ぶりの新説となります。

しっぽをなくす遺伝子

 発見のきっかけは、助教が学生時代に行った「カエルにオタマジャクシの尾の皮膚を移植する」という実験だそうです。2匹は遺伝的に全く同じであり、例えていうならば、子どものころの皮膚を大人になってからの自分に移植したのと同じなのに、拒絶反応が起きたそうです。このことから彼女は「免疫系による拒絶が、オタマジャクシの尾の退縮に関わっている」とう仮説を立てました。

 今回の発見につながった実験は、同様の移植を繰り返して行われました。移植を繰り返すことで、カエルの体内にオタマジャクシの皮膚に対する「抗体」を作らせ、それをもとに拒絶反応を起こす「抗原(アレルゲン)」の遺伝子2種を特定したのです。このしっぱを拒絶する2つの遺伝子は、いずれもオタマジャクシの皮膚にある未知のたんぱく質だったそうです。

 このたんぱく質は自分の体内で作られたにもかかわらず、免疫機能により異物とみなされるのが特徴です。研究チームは、発見した遺伝子に、己の尾を食らう空想上の生き物という意味のギリシャ語のオウロボロスと名前を付けました。オウロボロスには2種類あり、それぞれOuro1、Ouro2と名付けられましたが、尾を壊すにはこれら2つの遺伝子がそろわないと機能しないそうです。

生物のからだの不思議

 免疫とは本来体内にウィルス等が侵入してきた際にそれらを排除する役目を果たしますが、それがからだの形を変えるのにもはたらくとは驚きですね。
 生物のからだはまだまだ不思議だらけです。
 ですが、科学技術の進歩とともに「不思議」で終わっていた現象がどんどん解明されていきます。今度はどんな不思議が解明されるのでしょうか。
 ちょっと説明するには難しい内容ですが、オタマジャクシが大好きな子どもたちに教えてあげたい研究でした。

この記事は、『きょういくじん会議』の記事を移転して掲載しているため、文中に『きょういくじん会議』への掲載を前提とした表現が含まれている場合があります。あらかじめご了承ください。
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