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おもしろ科学盛り沢山! イグ・ノーベル賞が今年も発表
kyoikujin
2010/10/21 掲載
イグ・ノーベル賞 世にも奇妙な大研究に捧ぐ! (講談社プラスアルファ文庫)

 今月6日、ノーベル化学賞を根岸英一氏と鈴木章氏が受賞されたのは、まだまだ、記憶に新しいところだと思います。ところが、その遡ること5日前、「裏ノーベル賞」や「ノーベル賞のパロディ」などの異名を持つ「イグ・ノーベル賞」を、同じように日本人研究者が授賞していたこと、皆様はご存知でしょうか。

◎イグ・ノーベル賞って?

 イグ・ノーベル賞を、英語に戻すと「Ig Novel Prize」と書きます。「ig」は接頭辞的に否定の意味を表すので、直訳すれば「ノーベル賞でない賞」となるでしょうか。もともとは「ignoble(品がない)」との掛け合わせで生まれた名前で、1991年に創立された、たいへんユニークな賞です。
 まずその授賞基準。ひとつめは「人を笑わせ、そして考えさせる研究」、そしてふたつめは「真似ができない、するべきでない業績」であるということ。これまでの授賞研究を見てみると、「落下するバタートーストの力学的研究(96年物理学賞)」や「検尿の際に患者がどのような容器を選ぶかについての丹念な収集、分類、考察(99年医学賞)」、「人のへその糸くずについての総合的調査(02年境界領域研究賞)」など、ちょっと笑ってしまうような個性的なものばかりです。
 さらに、授賞式もユニークです。会場は(なぜか)ハーバード大学で最も権威のある講堂であるサンダースシアターで行われ、授賞式を挟む一週間ほどは、町全体がお祭り騒ぎになるそうです。式典の最中には客席から壇上まで紙飛行機が飛び交い、名前を呼ばれた授賞者がポーズを取りながら登場するなど、まさにその名の由来に相応しい個性的な授賞式になっています。

◎日本人は受賞常連!

 このように華々しく授賞されるイグ・ノーベル賞ですが、実は日本人は受賞の常連だといいます。
 これまでイグ・ノーベル賞は、およそ二十年にわたって行われてきましたが、なんと、ほぼ毎年と言ってよいほど日本人が受賞されているのです。これまでの受賞合計人数は20人を超えており、まさに「受賞大国」といっても過言ではありません。イグ・ノーベル賞の日本での知名度を高めた、タカラトミー「バウリンガル」の授賞をはじめ、山本麻由氏(なんと二十代の女性研究者です。)の「牛糞からバニラの香り成分を抽出する研究」など、ユニークな研究が目白押しです。また、今年2010年には、公立はこだて未来大学の中垣俊之氏が、「粘菌が最適な鉄道網を構築できる能力を持つことの発見」という研究で、交通計画賞を受賞しました。

◎「真剣」で「おもしろい」!

 創立からおよそ二十年。イグ・ノーベル賞は、いまや「裏ノーベル賞」の異名に相応しい人気と知名度を誇っています。自薦他薦を問わない応募延べ数は、なんと年間5000件にも及ぶそうです。なぜ、このような人気を獲得することができたのでしょうか。
 「研究」「調査」「計算」…などと聞くと、難しくて面倒そうで、苦手だなと感じる人も結構多いのではないでしょうか。ところがイグ・ノーベル賞は、「お固く」感じられる研究でも、少し視点を変えてみれば、滑稽さやおかしみを持つものだということを教えてくれます。また一方で、授賞研究をよく調べてみれば、そこには真剣に研究に取り組む研究者たちの真摯な姿勢もうかがうことができます。イグ・ノーベル賞は、「研究」の持つさまざまな面白さを教えてくれるのです。

 「真剣」で「おもしろい」イグ・ノーベル賞。秋の夜長に、笑ったり感心したりしながら、その研究成果を楽しんでみるのもよいかもしれませんね。

この記事は、『きょういくじん会議』の記事を移転して掲載しているため、文中に『きょういくじん会議』への掲載を前提とした表現が含まれている場合があります。あらかじめご了承ください。
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