きょういくじん会議
まじめなニュースからやわらかネタまで、教育のことならなんでも取り上げる読者参加型サイト
韓国に学ぶ! 小学校英語における電子黒板のあり方とは
kyoikujin
2010/10/25 掲載
日本の小学校英語を考える―アジアの視点からの検証と提言

 以前のきょういくじんでも取り上げ、その導入の是非や使い方が依然議論の的となっている電子黒板。
 一方でお隣韓国は、電子黒板を始めとする電子機器の導入が進んでいることが知られています。
 今回は同じく大きな議題となっている小学校英語に焦点を絞り、韓国において電子黒板を始めとする電子機器がどのように使われているのかを見ていくこととします。

もはやベテラン!? 韓国の小学校英語教育
 まず始めに、韓国の英語教育施策を見てみましょう。韓国では、1981年より「特別活動」という位置づけで小学校英語が導入されており、1997年に小学校3年からの英語授業が必修化されています。これに伴い、現職教員に対しては120時間の英語研修が実施され、ネイティブスピーカーや英語専任教員の配置を進めるなど、国を挙げて小学校英語教育の体制を整えていった様子が窺えます。

 研修や補助教員などの導入が進んだとはいえ、実際の授業において何よりの助けは、教科書と充実した指導用教材と言えるでしょう。学年ごとの国定教科書はもちろん、児童には教科書の内容と連動したCD-ROMが、教師には教師用指導書と指導用CDが配布されています。そしてこれらを活用する土壌として、電子黒板等ICTの普及があります。現在韓国ではほとんどの小中学校に、電子黒板、電子教卓、IPTV等が配備されており、さらにICT支援員を配置するなど、こちらも国主導で手厚く支援が行われています。来春にはなんと全小中学校で英国数の3科目について、デジタル教科書の導入が義務化されることになっています。これも電子黒板が導入されている基盤あってこそと言えるでしょう。

 こうした背景から、現在韓国の小学校英語の授業では電子黒板や指導用教材を用いほぼ画一的な指導が行われており、教員の英語力は授業に関係しないという声も上がるまでになっています。

大事なのは、どう使うか
 では、この韓国の事例から日本が学ぶべきこととは何なのでしょう。
 教育施策方針の違いもあり、韓国の例をそのまま日本に当てはめることはできません。また韓国の例が必ずしも正解というわけでもありません。しかしながら、「授業の質を確保するために、電子機器を基に授業を進める」という明確な意思が感じられる韓国に比べると、現在の日本では「とりあえず電子黒板を導入しよう」となってしまっていないかという懸念を抱いてしまいます。電子黒板はあくまで道具なのですから、それらをどう活用し、どのように目的達成につなげていくのかということを考えていかねばならないのではないでしょうか。例えば、韓国ほど指導ソフトや補助教員が充実しておらず、担任教師の裁量によるところが大きい小学校英語においては、単語の発音等モデルの提示を電子黒板に任せ、児童とのコミュニケーションの場面では実際に教師がやりとりをする。正確な発音の提示等は電子黒板に分があるかもしれませんが、実際のやり取りでは児童のことをよく知る担任教師の役割が生きる部分もあるでしょう。何より発音等が多少間違っていても、教師が何かを伝えようとする姿を見せることが、日本の小学校英語が掲げる「コミュニケーションに対する態度の育成」につながるのではないでしょうか。

 電子黒板に関する議論はまだまだ続きそうですが、すでに導入が進んでいる各国の状況を踏まえながら、「電子黒板で何ができ・何ができないのか」「何のために電子黒板を使うのか」という点についても考えていかねばなりませんね。

この記事は、『きょういくじん会議』の記事を移転して掲載しているため、文中に『きょういくじん会議』への掲載を前提とした表現が含まれている場合があります。あらかじめご了承ください。
コメントの受付は終了しました。