きょういくじん会議
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経済優先! 農業優先? TPP参加に賛否両論!
kyoikujin
2010/10/29 掲載
農産物貿易自由化で発展途上国はどうなるか―地獄へ向かう競争―

 27日の読売新聞の一面にTPPという言葉が載せられているのをご覧になった方も多いかもしれません、最近、ニュースや新聞などで取り上げられることも多いので、一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。TPPとは環太平洋戦略的経済連携協定(Trans-Pacific Partnership)のことで、現在、参加の是非をめぐって、賛否両論渦巻いている状況のようです。

 環太平洋戦略的経済連携協定は、太平洋地域の貿易の自由化を柱とする協定で、現在、チリ、ニュージーランド、ブルネイ、シンガポール、米国、オーストラリア、ペルー、ベトナム、マレーシアの9カ国が交渉をしています。日本や中国、カナダ、フィリピンなどはその交渉に参加するかどうかを検討している段階ですが、日本国内では意見がまとまりきらず、参加したとしても交渉は難航しそうな状況です。
 参加することに賛成の立場を示しているのは、経済産業省などを中心とした輸出産業、それに対して参加に慎重な姿勢を見せているのが農林水産省などの農業、となっています。経済産業省では、TPPに不参加ならば、世界的な貿易自由化の流れに取り残され、自動車などの輸出産業を中心に10兆円以上の損失が出ると試算しています。逆に農林水産省では、TPPに参加すると農業関連産業も含めて11兆円以上の損失となり、食料自給率も現在の40%から14%まで落ちると試算しています。先ごろ基本合意した、日印包括的経済連携協定では、米などの農産物は関税撤廃の例外にされており、TPPでも農産物の関税撤廃には難色を示しています。
 内閣府はTPP参加でGDPが0.5%ほど押し上げられると試算しており、参加に前向きですが、交渉の段階で、米などの農業分野の関税を残すと言う例外規定を認められるのかなど、農業分野での反対をいかに抑えられるか、という点に焦点が向けられそうです。
 小学校5年生の社会科や中学校の地理では、日本の農業は、諸外国の大規模で企業的な農業に比べて、規模の小さな自作農が多く、生産にかかるコストが高いことが問題点として挙げられています。また、1990年代に進展した農産物の貿易自由化も大きな影響を与え、
食料自給率が下がる原因となったことも述べられています。しかし、今回のTPP参加問題は、過去に類を見ないほどの変化を及ぼし、日本の農業のあり方を根本から変えるものとなるかもしれません。産業の発展と農業の保護、両立は難しいかもしれませんが、慎重に決定しなければならない問題ですね。

この記事は、『きょういくじん会議』の記事を移転して掲載しているため、文中に『きょういくじん会議』への掲載を前提とした表現が含まれている場合があります。あらかじめご了承ください。
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