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数学が守る現代社会 リーマン予想は解決するか?
kyoikujin
2010/12/16 掲載
リーマン予想・天才たちの150年の闘い〜素数の魔力に囚われた人々〜

 みなさんは、「ミレニアム懸賞問題」というものをご存知ですか? これは、2000年にアメリカのクレイ数学研究所というところが発表した、100万ドルもの懸賞金がかかった、当時未解決だった次の7つの数学の問題のことです。

ミレニアム懸賞問題とは

  1. P≠NP予想
  2. ホッジ予想
  3. ポアンカレ予想
  4. リーマン予想
  5. ヤン・ミルズ方程式と質量ギャップ問題
  6. ナビエ-ストークス方程式の解の存在と滑らかさ
  7. バーチ・スウィンナートン=ダイアー予想

 もちろんこの7問以外にも未解決の問題はありましたが、数学上特に重要でかつ難解なこの7問に対して、最初に証明した人には賞金が与えられることになりました。
 証明できたら、まず数学雑誌に論文を送り、それを別の数学者に検証してもらいます。その後、2年間その証明に誤りが見つからなければ見事“解決”となり、100万ドルを手にするのです。

リーマン予想はポアンカレ予想に続くか?

 100万ドル、およそ1億円もの賞金をかけるくらいだから、実は解くのは無理なんじゃないかって? もちろん簡単には解けませんが、7問のうちすでに、ポアンカレ予想は2003年に証明され、リーマン予想は現在2年間の検証期間中です。ポアンカレ予想が提起されたのは1904年ですから、実に100年もの間未解決だった問題が、次々と解決するかもしれない―実にワクワクする話ではありませんか?

現代社会のセキュリティは数学が守っている!?

 とはいっても、単なる数学の問題でしょ、とお思いの方もいらっしゃることでしょう。しかし、現在検証中のリーマン予想は、もし解決したら私たちの生活に大きな影響をもたらすかもしれないのです。
 リーマン予想とは、素数 (※1)の並び方に関する予想です。素数の現れ方・素数を求める公式は、その不規則性により、これまで誰もその法則を見つけることができないでいます。そして、この不規則さゆえに、ネットショッピングなどをする際に使われる暗号化の技術に、素数が使われているのです。
 ある素数をかけた数を求めるのは簡単ですが、ある数から素数を取り出すことはとても大変です。7×23はすぐにできても、161を素因数分解しろといわれると、ちょっと考えてしまいますよね。桁が大きくなればなるほど計算は複雑になる、その仕組みが利用されているということです。
 つまり、デジタル情報を素数を使って暗号化することで、第三者から守るという働きをしています。もし、素数の仕組みがすべて解読されてしまったら、現代社会は大混乱に陥ってしまうかもしれません。

 新しい学習指導要領の解説では第5学年で素数という言葉が出てきています。小学校で習う事項が、現代社会の重要な鍵になっているなんて、面白いと思いませんか? さて、リーマン予想はどうなるのか。社会への影響力も含め、とても興味深いですね。

※1 素数:自然数のうち、1と自分自身意以外に約数をもたないもの(1をのぞく)

この記事は、『きょういくじん会議』の記事を移転して掲載しているため、文中に『きょういくじん会議』への掲載を前提とした表現が含まれている場合があります。あらかじめご了承ください。
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