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科学を伝える場―サイエンスアゴラ2010レポート
kyoikujin
2010/12/9 掲載
サイエンスコミュニケーション―科学を伝える5つの技法

 サイエンスアゴラというイベントをご存知でしょうか? 科学に関して人々に伝えたいことがある! という人たちが、さまざまな展示やワークショップや実験、講演などを企画・出展するイベントです。2006年から始まったこのイベント。2010年は11月19日〜21日に国際研究交流大学村で実施されたのですが、そのときのようすをレポートします。

各ブースのようす

 サイエンスアゴラの出展者は、企業や大学、NPO法人や科学館・博物館関係者、一般の団体などさまざまです。訪れているのは、やはり子どもを連れたお父さん、お母さんの姿が多いようでした。
 出展内容もさまざまですが、遊びながら元素記号や元素の性質を覚えられるカードゲームができるブースや、熱だけで、力を入れずに氷を切る実験ができるコーナーなど、子ども達が楽しみながら科学にふれている場面に遭遇できました。産業技術総合研究所の偏光板とセロハンテープを使った光の偏光を利用した万華鏡づくりなどは、しくみは難しくても、子ども達が興味津々で一生懸命に工作している姿がありました。親子連れで、親に連れてこられた…というよりは、積極的に実験をやりたい! という子どもが多いように見受けられました。
 また、子どもだけでなく、学校の先生に向けて授業での実験の方法を紹介している大学もあり、フレミングの法則を利用したマイクやスピーカーのしくみを授業で取りあげる方法を解説してもらえる、という場面も。子どもを連れた親だけでなく、学校の先生も、指導法や授業のネタ探しにでかけてみるとよいかもしれません。

イベント閉幕セッション―ノーベル賞受賞者・根岸氏の講演

 さて、このイベントでは、最終日の終幕セッションで、ノーベル賞受賞後、はじめて日本で根岸英一氏が講演を行うということでも盛り上がりました。
 根岸氏は、ノーベル賞をとる確率は10の7乗分の1程度で、宝くじよりも確率が低いように見えるけれど、これを10×10×10×10×10×10×10分の1と考えて、10倍ずつ確率を上げていくことはできると、自身の渡米経験などの体験談も交えて説き、会場の人々を励ましました。
 また、「自分が好きなことは何なのか、そしてその好きなことを自分がよくできるかどうか、自分の資質をある程度客観的に見てみること」「夢をもって、追い続けること」の大切さを、この講演の究極のメッセージとして伝え、会場に元気を与えました。
 根岸氏ご自身の人生の主目的に対する考え方が分かったり、好きで資質のあることにに関しては諦めずに何年も何十年も続けることの大切さについて考えさせられる講演となりました。
 この日の講演のようすはサイエンスニュースで見ることができます。

科学を伝える人たち―サイエンスコミュニケーター

 今回のこのイベントはサイエンスコミュニケーションの場です。サイエンスコミュニケーションとは、科学者や政府、教育関係者、一般の人々をふくめた、科学に関する対話の場。ここで科学を伝える人々は、サイエンスコミュニケーターといいます。今回目を見張るものがあったのは、学生の科学系コンテストの受賞者や、中学生、高校生が、サイエンスコミュニケーターとして出展し、自分たちの研究の成果や経歴などを話したり、小さい子どもに自分たちの考えた理科の実験を体験させていたことです。残念ながら筆者の訪れた最終日には行われていませんでしたが、国際科学オリンピックの歴代メダリストが質問に答えるパネルディスカッション等もあったようです。こういった、年齢の遠くない人たちに教えてもらえると、小さなお子さんでも質問もしやすく、より科学が身近に感じられるかもしれません。
 まだまだサイエンスコミュニケーターの活躍の場は少ないですが、こういったイベントをふえ、科学の魅力が伝わっていくことを願います。来年のこのイベントは、2011年11月18日(金)から20日(日)の開催を予定しているそうです。気になった方、ぜひ足を運んでみてください。

この記事は、『きょういくじん会議』の記事を移転して掲載しているため、文中に『きょういくじん会議』への掲載を前提とした表現が含まれている場合があります。あらかじめご了承ください。
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