きょういくじん会議
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長期化する児童の入所期間−児童相談所一時保護所
kyoikujin
2010/12/15 掲載
居場所を失った子どもを守る 子どものシェルターの挑戦

 「児童虐待」という言葉をよく耳にし、その認知度も上がっている昨今ですが、児童相談所に通報された被虐待児がその後どうなるかについては知らない人の方が多いと思います。

 みなさんは「児童相談所一時保護所」という施設をご存知でしょうか? 児童相談所には一時保護所という附属の施設があり、そこでは何らかの理由で親元にいられない子どもを一時保護しています。
 被虐待児もその中に含まれ、すべての子がというわけではありませんが、緊急性を要する子はまずここに入所します。

長引く入所期間

 一時保護所はあくまで「一時的に保護する施設」ですので、保護期間が最長2ヶ月と決められています。
 ですが、近年虐待の相談件数の増加に伴い、入所児童の増加,および長期化が問題となっています。11月15日の読売新聞によると、千葉市の児童相談所一時保護所では、1年間も入所していた児童もいたそうです。
 しかし、おそらくこれは千葉市に限った特異的なことではなく、全国に同じような状況の保護所が少なからずあると思います。1年間とまではいかなくても、入退所を繰り返し、1年のほとんどをすごす児童もいるのではないでしょうか。

入所児の学習権

 一時保護所は保護する施設であり、入所児は基本的に個人の自由で外出することはできません。それは学校へ通うことも同様です。
 では、保護所の入所児童児たちはどのように学習を行っているのでしょうか。
 一時保護所では、職員が教師代わりをし、入所児童たちに勉強を教えます。仙台市児童相談所の一時保護所では、市の教職員が2名、常勤の講師が2名保護所職員としていますが、これは全国的にも数少ない恵まれた環境です。
 といっても当然のことながら普通の学校教育にかなう状況ではありません。入所が長引くとそれだけ、学習面がおろそかになってしまうことがあります(一方で通常学級ではできない、個に応じた学習ができる面もあります)。

ニュースで終わらすことなく

 上記にあげた以外にも、現在一時保護所で抱えている問題はいくつかあります。例えば、入所児童の増加による施設の限界、多くの児童が一箇所ですごすことのストレス、異なる事情を抱えた児童(一時保護所にはもちろん非行少年も入所します)が集まることにより起こる問題、そしてなにより子どもとかかわる職員の人手不足。これらは一時保護所だけでなく、児童養護施設等などにもいえる状況です。

 「知る」ということはとても大切なことだと思います。私たちは虐待や非行の事件をメディアを通して知ることはありますが、その大部分はニュースの中での情報で終わってしまいまいがちです。事件のあとも生きていかなければならない子どもにまでなかなか想いは馳せられないと思います。
 「虐待→児童相談所に相談」という流れはここ近年でいろいろな人が知ることとなりました。事実、それで命が救われた子どももいると思います。ですが、今後さらに虐待や非行などが少なくなることを願うのであれば、その後の子どもたちを受け入れる環境やそこに携わる人々の充実も欠かせないと思います。つらいことがあっても、その後の環境で子どもの笑顔を取り戻せる、そのような仕組みを私たち大人は作っていきたいですね。

この記事は、『きょういくじん会議』の記事を移転して掲載しているため、文中に『きょういくじん会議』への掲載を前提とした表現が含まれている場合があります。あらかじめご了承ください。
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