- 個別最適な学び
- 算数・数学
「個別最適な学び」において、個別学習は必要な活動です。学習形態を個別学習にすることで、1人で考えたり、まわりの人と話し合ったりと、それぞれの子どもが主体的に学習する姿がたくさん見られるようになります。
反面、個別学習では、学級全体で解き方や考え方が共有される機会が少なくなることが短所としてあげられます。そこで、単元途中でも、個別学習を何時間か行ったら、共有する時間を設けることが大切です。さらに言えば、単元末では、単元内で使ってきた数学的な見方・考え方を学級全体で共有し、将来の学習でも使えるようにしておくことが大切です。
そこで今回は、個別最適な学びにおける単元末の振り返りを紹介していきます。
単元末の学習活動として主に行うべきは、以下の2つだと考えています。
・単元内で使った数学的な見方・考え方で解決する活用問題を扱う一斉授業
・一人ひとりが行う単元全体の振り返り
それぞれについて、次から述べていきます。
単元内で使った数学的な見方・考え方で解決する活用問題を扱う一斉授業
個別最適な学びを実現するためには、どの時間で一斉授業を行い、どこから個別学習を行うかということを、あらかじめ考えておく必要があります。1つの代表的な単元構成の方法として、以下のような進め方が考えられます。
この単元構成の終盤の一斉授業では、中盤の個別学習でそれぞれが学習したことを学級で共有し、将来の学習で子どもが使えるようにしていくことが大切です。
しかし、ただ「これが大切です」「これを覚えましょう」だけでは、学習としてはおもしろくないので、単元内で使った数学的な見方・考え方を働かせて解決する問題を通して、個別学習で学んできたことを共有していくことが大切だと考えています。
ここで紹介する授業は、6年「円の面積」の単元末に行ったものです。扱った問題は、どの教科書でも載っているラグビーボール型の面積を求める問題で、グレーの部分の面積を求めるものです。学習形態は、一斉授業です。
この問題は、円の面積の公式という知識・技能だけでなく、「面積を求められない場合は、面積を求められる形にする」という、単元内で使ってきた数学的な見方・考え方を働かせられるところによさがあります。
例えば、下のように「1/4円を2つ重ねて、正方形の面積をひく」という解き方があります。
この解き方も、ラグビーボール型の面積がそのまま求められないので、1/4円2つと正方形という、面積を求められる形にして求めているのです。
こういった解き方を一斉授業で取り扱うとき、解き方を説明して終わりとせず、「どうしてそうしようと思ったの?」という発想の源を問い、数学的な見方・考え方を言語化させていくことが大切です。
単元末で活用問題を扱う一斉授業では、問題の解き方ではなく、単元内で扱ってきた知識・技能、そして何より、数学的な見方・考え方を共有することが大切です。そのためには、問題を解きながら、「こんな考え方が大事だったな」とメモさせていくようにするとよいでしょう。そして、「結局、○○という考え方が大事だったんだね」ということを全員で共有することが、将来の「協働的な学び」の礎になるのです。
一人ひとりが行う単元全体の振り返り
単元の最後では、一人ひとりが単元全体を振り返ることも大切です。算数の学習というのは、どうしても目の前の問題を解くことに意識が向いてしまいがちで、学習のつながりを意識させることが難しいものです。そこで、単元が終わった後、単元全体を振り返り、1時間ずつの学習のつながりを意識させるのです。
そこで、振り返りシートを使って、「単元の学習は、今までのどんな学習とつながっていたか」「単元の学習で使った大事な考え方や知識は何だったか」「単元の学習を通して、できるようになったこと、これから使えそうなことは何か」「その他(印象に残ったことや面白いと思ったこと)」の4つを考えさせています。
上の振り返りシートは、「円の面積」の学習の振り返りをした際に子どもが実際に書いたものです。書いた時間としては10分程度です。このシートに、単元内で扱った大切な数学的な見方・考え方が書けていれば、その単元での学習は身についていると考えられますから、評価にも使えるということです。
なお、単元構成を考える際、最初に振り返りシートをつくるのがおすすめです。私が提示した4項目だけでなく、変えてもよいと思いますが、知識・技能よりも、数学的な見方・考え方や学び方を中心に書かせるとよいでしょう。
振り返りシートに何を書かせたいのかを最初に検討することで、「どんな見方を大切にしたいのか」「どんな考え方を使わせたいか」といったことがみえてきます。すると、「ここは一斉授業でやって全員が共有した方がいい」とか「ここは子どもだけでも発見できるから、個別学習にしよう」といったことまでみえてきます。