昨年6月に起きた医師宅放火殺人事件についてまとめた書籍「僕はパパを殺すことを決めた」が波紋を広げている。
主な理由は、この本が本来入手できない少年(当時高校1年・同事件で中等少年院に送致)の「供述教書」を引用していること。これを重くみた長勢甚遠法相が人権侵犯事件として同省人権擁護局に調査を指示したことが明らかになった。
そもそも少年法の目的は、少年の健全な育成を目的とするものであり、その審判は非行のある少年の内省を促すものとされ、公開しないことが定められている。今回この事件の供述調書がどのようなルートで著者のもとに渡ったのか明らかになっていないが、法務省や裁判所にとっては、少年審判の理念に照らしてもとても看過できない問題ということであろう。
一方、同書籍の著者は自身のブログで執筆の意図について次のように語っている。
少年事件の真相は全く表に出てこないため、間違った情報が広がったりするため、遺族が非常に傷つき、事件の時より、さらに悪い状況に陥りがちです。思春期の子どもを持つ親は、人ごとではなく、「自分の子どもは大丈夫か?」と、不安に駆られる毎日をすごしてしまいます。しかし、真実を明らかにすることにより、情報を共有でき、追い詰められる子どもの気持ちをある程度理解することが出来でしょう。それにより、事件や事故のシグナルを大人が察知でき、防止することができると思っています。
情報を「公開しない」ことが、子どもたちのためになるのか、情報を「公開する」ことが、子どもたちを救うことになるのか。少年犯罪を商売のタネにしているとの生理的な反感もあろうが、まずは「何が子どもたちのためになるのか」議論を避けることはできない問題だ。
- 少年調書「引用本」を調査=法務省(時事通信)
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2007060500434 - 奈良の放火殺人 供述調書引用本を調査(東京新聞)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2007060502021834.html - 法務省ホームページ(法務省)
http://www.moj.go.jp/
国民が何について知りたいかをおまえらが勝手に決めるなと。