英語教育ユニバーサルデザイン 指導に役立つ教材・教具
「がんばっているのに英語が覚えられない…」読み書きが苦手な子どもたちの英語指導に役立つ教材・教具を紹介。 学び方を変えれば、英語はできるようになる!
英語教育ユニバーサルデザイン 指導に役立つ教材・教具(8)
聞くことの指導―英語の音韻認識2
神戸山手短期大学准教授村上 加代子
2019/1/5 掲載
  • 英語教育UD 教材・教具
  • 特別支援教育

今回のねらい

 さて、前回は英語の音韻認識の単位、そしてフォニックスとの関連についてご説明しました。日本語では、モーラ(拍)という単位で音声を捉えていますが、英語の場合は英語の音韻が育っていなければ単語を知っていても「聞き取れない」だけでなく、文字と対応させることも困難になります。
 実際、英語圏では音韻処理の障がいを原因とするディスレクシアの人口が非常に多いことから、読み書き指導はキンダー期から音韻認識をしっかりと育成し、フォニックスへと段階的に育てるよう体系化されています。そのフォニックスに必須と言われる音素意識はネイティブの子どもでもなかなか自然に身につけることが難しく、個人差が大きいため、明示的な指導が行われています。また、年齢的にも音素認識が発達するのは遅く、9歳ごろとも言われます。そのため日本でもフォニックス指導を急がず、小学校高学年になったくらいが最も負担にならず気づきも定着も早いのではないか、と私自身は思っています。
 音韻操作には色々なものがあるのですが、たとえば「同じかな?違うかな?」という活動や、「つなぐ」、「分ける」、「一部を他の音と入れ替える」など、文字を使わずにゲームのように遊びます。今回は音素感覚を高めるアプリをご紹介します。文字ありと文字なしの両方があります。音声操作に集中させたければ文字なしバージョン、文字の音を確認しながら行う場合は文字ありバージョンが良いでしょう。

What's Changed?

製作
Readable English
配布元
What's Changed? Skill Builder-App for iPhone and iPad
対象
小学校高学年以上〜

 What's Changed?はUSバージョン、英国バージョン、オーストラリアバージョンがあります。今回はBeginnerレベルのみ紹介します。
 単語の中のどの音が変わったかを聞き分けるのが目的です。音韻認識の操作では、分ける(セグメンテーション)、つなぐ(ブレンディング)スキルの効果が期待できます。
(1)スタート画面

図1

スタート画面

 Playを押して始めましょう。
 What's Changed?の特徴は、文字を使わずに「どの音が変わったか」の練習から始められること、また、文字でもどの文字が変わったかを見ながら遊べることです。

(2)Colors

図2

Colors1

図3

Colors2

 Colors(スタート画面右側)は、並んだタイルのうちどちらかの音が変わります。変わった方をタップするだけです。まず、“This Word(この単語)”ボタンを聞き、次に“Next Word(次の単語)”ボタンを押し、どの音が変わったか、変わった文字(音)をタップします。
 BeginnerのタイルのGame1はVC(母音+子音)の組み合わせで出来ています。ですので、ここで左側のタイルが取れないということは、母音が弱いのかな、と推測できますが、まだこの段階ではあまり間違えません。
 ですがGame3になると、タイルの数が3枚に増え、聞き分ける音素の数も増えてきます。Colors2の写真のように、答えた単語は右端に文字で示されます。Game6(CCVC)になると、連続子音が出てくるため、特に日本人にとっては良いトレーニングになります。

(3)Standard English

図4

Standard English

 次にStandard English(スタート画面左側)に進みましょう。
 Standard Englishでは、文字を見ながらどちらの文字が変わったかをタップします。カードと違って、文字を確認しながらタップできるため、音と文字の対応習得練習にもなります。
 Game1は、母音と子音の組み合わせ、そしてGame3からCVCと、だんだん難易度が上がっていくスタイルは同じです。

 「しっかり聞く」ことを促すような遊びを通して音素感覚も身につけていくことが望ましいとはいえ、聞くことは集中力を要する活動ですので長時間連続してやらないこともポイントです。楽しい範囲で繰り返しましょう。

*URLや教材の情報は掲載時点でのものになります。

村上 加代子むらかみ かよこ

米国ウィスコンシン大学マジソン校卒。
神戸山手短期大学准教授。英語教育ユニバーサルデザイン研究会代表。
学習障害のある児童生徒対象の「チャレンジ教室」を主催。英語教科における特別支援やユニバーサルデザインの啓発活動に積極的に取り組んでいる。教員間の情報交換のプラットフォームづくりを目指している。

(構成:佐藤)
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