- 菊池道場の価値語録
- 学級経営
新学期が始まり、子どもたちと過ごす中で一人ひとりのよさが分かってきた頃ではないかと思います。そろそろ「ほめ言葉のシャワー」をはじめとした子どもたちがお互いを認め合うような活動をスタートさせたい時期です。「価値語」の指導を通して、子どもたち同士をつなぎ、学級の土台をつくります。
観察力を磨こう
「ほめ言葉のシャワー」を始めるにあたって、子どもたちに身に付けてほしい力は「観察力」です。子どもたちを見ていると、自分や自分と直接かかわりのある一部にしか関心がない子が多いなと感じます。そんな中で、毎日の主役にほめ言葉を贈るという活動を提案すると必ず「うーん。」と困ってしまう子どもが出てきます。
そこでこの価値語の登場です。観察の視点を伝えると子どもたちにも分かりやすいです。
〇友達の、その人にしかない「よさ」に注目すること。
〇以前とは違った「成長」に目を向けて観察すること。
教師自身が、この視点を持って子どもたちに言葉かけを行いよいモデルになることや、実際のほめ言葉のシャワーの中で『この子はよく観ているなあ』という子どもの発言を取り上げていくことで、クラス全体の「観察力」はどんどん磨かれていきます。
「〇〇さんは、授業の号令のときから鉛筆と消しごむを用意していました。その鉛筆はきちんと削ってあったし、丁寧に並べてあったので、○○さんの頑張りたいという心が伝わってきました。」
観察力を磨くことで、人に関心を持つことができる。その人の内面を考えられる。相手のよさに目がいく。そんな子どもたちに成長していきます。
言葉の貯金力
子どもたちの会話を聞いていると、ワンパターンな言葉の繰り返しで会話していることに気付きます。『うそっ。』『本当。』『かわいい。』『すごい。』―これだけのやりとりでは、豊かなコニュニケーションは図れません。
子どもたちに国語辞典を持たせ、分からない言葉はすぐに調べることを定着させましょう。すると、新しい言葉を知って実際に使いたい、みんなに聞いてほしいという子どもが出てきます。「ほめ言葉のシャワー」の中で、友達にほめ言葉を贈る際にこういった子どもたちが大活躍します。
「〇〇くんは、奮励努力の人ですね。漢字テストに向かって、スキマ時間にこつこつと練習しているのを見て、私も頑張ろうと思いました。」
新しい言葉が出てくると、メモする子どもたちもいます。また、教師からのほめ言葉で、クラス全員を違った四字熟語でほめようと取り組んだときには、子どもたちは興味を持って聞き、とても楽しみにしてくれました。教師が一緒になって楽しむことで、子どもたちのやる気につながります。
こうして出てきた言葉は、クラスに広がり蓄積されていきます。良質な言葉を通して、子どもたちのつながりは良好なものへと変化していきます。
束になって伸びる
これから一年間、共に生活し共に成長していくために、子どもたちにどうしても伝えたいのは、自分だけではなく周りの友達のことも考えてほしいということです。人と人がつながっていくために、お互いに「支える・守る・補う・助ける」ことを大切にする価値語です。
これは、学級開きの日にできた価値語です。例えば、集団として行動するには、時間を意識して動かなくてはいけません。「はやく」行動する必要があります。
「『はやい』には『早い』と『速い』があります。どちらの『はやい』がふさわしいと思う?」
と子どもたちに投げかけると、しばらく考えている子どもたちの姿がありました。
「『速い』の方でいこう。この漢字の中には『束』という字が入っています。みんなはこのクラスという束の中の一人なのです。」
クラスという束の中の大切な一人として、責任ある行動をしていくこと、そして、成長に向かって努力していくこと、あなたの成長がクラスの成長であり、クラスの成長があなたの成長につながるのだということを伝えました。
「束になって伸びる」―この価値語を意識させることで、子ども同士がお互いに声を掛け合い学び合う姿が見られるようになります。一年間を通して大切にしたい価値語です。