堀江式 国語授業のワザ
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堀江式 国語授業のワザ(10)
一年間の集大成!「身につけた言葉の力」スピーチをしよう
―〈一年間に身につけた力〉を自覚させる―
兵庫教育大学大学院教授堀江 祐爾
2013/3/5 掲載

【スピーチ】

もうすぐ、この学年を終えることになります。この一年間に「身につけた言葉の力」を明確にするには、どのようにすればよいでしょうか。

ココがポイント!

教科書の「身につけた力を生かそう」を活用する

 教科書には、〈「身につけた力を生かそう」〉(光村)や〈「ことばの力」のまとめ」〉(東書)など、身につけた言葉の力をまとめた表が添えられています。そうしたものを活用して、身につけた言葉の力を振り返る機会を、学期ごとに、特に学年末においては設けたいものです。
 低学年でも丁寧に展開すれば可能です。ここでは、2年生の「一年間の国語学習で身につけた力スピーチ」の例(元・豊岡市立高橋小学校の西垣惠子教諭の実践)を示します。

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ワザ1 【「一年間の国語学習で身につけた力」スピーチ原稿】を書かせる

「一年間の国語学習で身につけた力」スピーチ原稿(2年)

 わたしが、2年生の国語学習でみにつけた力をしょうかいします。
 はじめに、「話すこと・聞くこと」のりょういきから話します。わたしは,日記スピーチで話したいことの中しんをはっきりさせて話しました。げんこうをじゅんじょに気をつけて話す力が身につきました。読み聞かせでは、自分のかんそうをもって聞きました。
 二番目に、「書くこと」のりょういきを話します。「サンゴの海の生きものたち」でじゅんじょに気をつけて、ヤドカリのせつめい書を書きました。「お手紙」で、はじめ・中・おわりに気をつけて書く力がみにつきました。
 三番目は、「読むこと」のりょういきを話します。わたしは、「たんぽぽのちえ」のポートフォリオで、時間やできごと,じゅんじょに気をつけて読みました。「スーホの白い馬」の4の場めんで、お話の山場(クライマックス)が分かる力がみにつきました。
 さい後に、「読書」について話します。『おひめさまそらをとぶ』という長いお話でも、さい後まで読みました。1年生のときは、106さつしか読めなかったけど、2年生になってから281さつ読める力がみにつきました。
 このように、わたしは2年生でこれらの「学びの力」をみにつけました。これから、3年生でも多くの学びの力をみにつけていきたいと思います。これで、おわります。

 上のスピーチ原稿を書かせるにあたり、3学期の「授業おさめ」として「2年生の国語の学習をふりかえろう」というシートを用意しました。「話すこと・聞くこと」「書くこと」「読むこと」「読書」の領域ごとに、「教科書教材一覧」を示し、「これまで身につけてきた力(「じゅんじょに気をつけて書く」など)」「どの教材、学習活動で身につけましたか」「3年生でのばしたい力は」ということを書かせています。「身につけた力」を自覚させる学習といえます。

ワザ2 【「一年間の国語学習で身につけた力」スピーチ】を保護者にも聴いてもらう

 そうしたシートを上のようなスピーチ原稿に書き直し学級において発表します。さらに、保護者にスピーチを聴いてもらうことによって、子どもとその保護者への説明責任を果たすことにもなります。保護者からの、「一年間を通して、わが子がどのような言葉の力を身につけたのかがよく分かった。」「これだけの言葉の力がついたことがうれしい。」と、子どもたちの成長を喜ぶ言葉が多く届けられました。

堀江 祐爾ほりえ ゆうじ

兵庫教育大学大学院教授、元中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会国語専門部会委員、平成20年版中学校学習指導要領(国語)作成協力者、「国語教育の実践と研究をつなぐ会」世話役代表。
主な著書に『「国語力」向上の授業改革1 国語科授業再生のための5つのポイント』『小学校新国語科 言語活動の展開がよくわかるシリーズ1 書く力がぐんぐん伸びる!「言葉のワザ」活用ワーク』、などがある。最新刊『小学校国語科授業アシスト 実物資料でよくわかる!教材別ノートモデル40』が好評発売中!

(構成:林)
コメントの一覧
9件あります。
    • 1
    • がま
    • 2013/3/7 21:12:21
    1年間のまとめスピーチですが、国語学習に限定し、さらに領域ごとに書くよう指導されています。各領域においても、どの教科書教材の学習でどんな力が身に付いたのか、子どもたちがはっきりとわかっているから、一人ひとりのオリジナルのスピーチ原稿ができると思います。1学期の教材文のことも書いてあるし、年間を通じた読み聞かせや読書のことも書いてあります。先生の年間通じたブレない指導が、子どもたちに確実に力をつけたすごい実践です。
    • 2
    • keichanman
    • 2013/3/9 12:16:12
    学習指導要領には、「学びの振り返り」をすることや「既習の学習で身につけた力」から次の単元で身につけたい力を設定することを求めています。しかし、実際の現場では、そういう振り返りも「つけたい力から単元を創る」こともなされていないことが多いのでないでしょうか。時間数がたりないことやどんな振り返りをさせたらいいのかがわからないといった声をよく聞きます。しかし、振り返り身についた力を自覚するからこそ、次へのステップに上がれるのだとおもいます。特に年間を振り返ることは、大切ですね。それをスピーチ活動につなげ、他者に伝えることにより、自覚化を促すことができますね。
    • 3
    • このはずく
    • 2013/3/9 18:20:42
    国語科は、どのような力が身に付いたのかを実感しにくい教科の一つである。「身につけた言葉の力」スピーチを行うことによって、どの学習において、どのような言葉の力を身に付けることができたのかを、子どもたちが実感することができる。このようなスピーチを行うためには、教師は、学習指導要領と照らし合わせて、子どもたちに身に付けさせる言葉の力を明確にして授業に臨む必要があろう。
    • 4
    • かすみまるこ
    • 2013/3/19 19:02:35
    「わたしは、『大造じいさんとガン』でひとり読みをがんばった。でも、いったいどんな力がついたのだろう。」というふうに、今までの学習の仕方では、子どもたちが、自分の成長を自覚できないままだと思います。体育で、「台上前転を6段の跳び箱でできるようになった。」算数で、「分数のかけ算のやり方が分かった。」というのと同じように、国語でも、一つの単元が終わったとき、「こんなことができるようになった。」と子どもたち自身が言えるような取組が大切だと改めて思いました。低学年でここまでできているのが、すばらしい!!高学年の見本になりそうです。
    • 5
    • 幸子
    • 2013/7/23 21:37:05
    子供たちが学校で何をしているか、どんな力を身に付けてきたかを知りたいと思っていらっしゃる親は多いでしょう。堀江先生がご紹介なさった「一年間の国語学習で身につけた力」スピーチを保護者にも聴いてもらう」活動はどのような言葉の力を身に付けることができたのかを、子どもたちだけではなく、親たちもが実感することができる場を提供している。このような活動を通して親たちが子供への理解が深めます。また、「一年間の国語学習で身につけた力」のスピーチの原稿を書かせることを通して、子供たちが、自分の成長を自覚できます。それから、多くの人の前でスピーチをすることを通して、子供の「表現力」、「伝いあう力」を高めることもできると思います。
    • 6
    • 703
    • 2013/7/24 22:08:18
    二年生でもこんな事が書けるのだなと感心しました。先生が、しっかり子ども達に学んでつけた力を価値づけて、そして繰り返しつけた力が沈まないように使わせて来た様子が目に浮かびました。確かに、スピーチの書きぶりも順序といったしっかり学んだ力がはっきり見取ることができます。また、保護者にも聞いてもらえる機会を設定されたことは、子ども達にとっても、保護者にとっても大変有意義で、相乗効果がある取り組みだと思いました。自分が親なら、こんな事を二年生でスピーチしてくれたら、どんなに成長がうれしく、担任や学校に対して安心して子どもを任せようと信頼も増すだろうと思いました。そして、子どもにもその思いが伝わり、きっともっといろんな力をつけたいなと意欲がわくと思いました。
    • 7
    • さっこ
    • 2013/7/24 22:14:41
    2年生でこれだけのメタ認知ができるのはすばらしいですね。担任の先生がねらいをしっかり持つだけでなく、子どもたちにもわかりやすく、的確に伝えていらっしゃることがわかります。「教材を学ぶ」のではなく、「教材で学ぶ」ことをいつも念頭においていますが、このようなまとめを2年生でしたことはありませんでした。習得だけでなく、活用や探究も考えて単元構成を組んできましたが、最後に子どもが自ら学んだことをまとめることは、次の学年の学習にもつながっていくと思います。書いてまとめると自分の考えがよくわかり、整理することができます。また、友達や保護者の人にも読み返してもらえるなど、利点がたくさんあります。是非、取り組んでみたいと思いました。とてもすばらしい提案、ありがとうございます。
    • 8
    • HIROYN
    • 2013/8/12 15:40:36
     小学生の頃、一分間スピーチというものがありました。「誰々と何をして遊びました。楽しかったです。」のような内容のスピーチが大半でした。高学年でも、出来事をただ述べているだけのスピーチがよくありました。言語活動が重視されていますが、ただやらせればいいというわけではないと思います。文章の構成の一つに「はじめ・なか・おわり」の形がありますメリハリをつけたり、聞き手に伝わりやすいように話したりするには、話の構成を考えることが大事です。また、敬語や主語・述語の関係など、正確な言葉が使えているかということもあります。これらのことは、学んだからといってすぐに使いこなせるわけではありません。繰り返し意識し、使っていく中で身につくものです。「身に付けた言葉」のスピーチは、習ったことを確認させることによって、言葉の力が本当に身に付く実践であると思います。
    • 9
    • タマ
    • 2013/8/15 22:21:41
    今まで授業で扱った教材について、それぞれの教材で「身につけた力」を挙げさせるというのは面白い取り組みだと思う。「身につけた力」を挙げることで、子どもたちは自身が多くのことを学び、成長してきたことを実感するのである。そして、ただ「身につけた力」を実感させるだけでなく、スピーチによって保護者や同級生と共有する場を設けていることがこの実践の凄さだと思う。同級生の発表によって、子どもたちは、同じ教材で学んでも「身についた力」には違いがあることを実感し、その後の学びにおいて、一つの学びに終わらず、他の発見がないか、さまざまなアプローチを行うことにつながるのである。この実践によって、子どもたち自身が「身につけた力」を実感としてもつことの重要性、意義を学んだ。より良い授業実践のためにも「一年間の国語学習で身につけた力スピーチ」、是非取り組んでいきたいと思う。
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