生活指導 2001年8月号
競争におびやかされる教師たち

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生活指導 2001年8月号競争におびやかされる教師たち

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ジャンル:
生活・生徒・進路指導
刊行:
2001年7月
対象:
小・中
仕様:
A5判 124頁
状態:
絶版
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目次

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特集 競争におびやかされる教師たち
特集の解説
荒井 伸夫
いま、教師が本当に怖いものは何なのか
荒井 伸夫
実践記録 競争におびやかされる教師たち
学校はチームだ!
新谷 開
いっしょに悩んだり、話したりしながら進めよう―子ども・保護者との対話的共同を広げ、対抗的公共圏を作ろう―
植田 一夫
青い空は青いままで子どもらに伝えたい―共同と自治で学校づくりを―
中村 悌一
実践記録のコメント
教師同士を競わせる時代に対抗する学校づくり―新谷、植田、中村氏の実践を読んで―
高橋 廉
コメントを受けて
「結局のところ、アドバイスは入らない」
新谷 開
アンケート主義についての問題意識と小学校の三者協議会
植田 一夫
教育目標・指導方針・実践の総括を全教職員で
中村 悌一
第2特集 学校をひらくとは?
学校発モバイルマガジン
塩崎 義明
「開かれた学校」を問う
桜 山女魚
学校を開いた三つのできごと
本田 広行
実践の蓄積・新たな胎動から見える明るい見通し―塩崎、桜、本田氏の報告を読んで―
志賀 廣夫
今月のメッセージ
東京大会に集い、生き方を考え合おう
宮原 廣司
全生研第43回全国大会基調提案
孤立化から共同に暴力を超えて信頼の世界を
基調提案委員会
教育情報
新しい時代の予感―「訴訟社会」の到来
赤池 守
書評
『総合学習と学校づくり』
金馬 国晴
読書案内
大会基調提案に関わって
折出 健二
読者の声
6月号を読んで
案内板 集会・学習会のお知らせ
集団づくり―わたし流メソッド (第5回)
小学校/迷ったら子どもの声を聞いてみよう―今なら間に合う実践のたてなおし
篠崎 純子
中学校/私が今やろうとしていること
高原 史朗
同時代を生きる教師たち (第1回)
荒れる学校に直面して(1)
五十嵐 晋
ほっとたいむ サークルからの発信
サークルは出会いの場
西原 祐一
コメント
三石 晃久
投稿 実践記録
班って何? リーダーって何?―第五期班編成をめぐって
清水 裕紀子
【コメント】なんのために班やリーダーを決めるのか
大和久 勝
全生研第43回全国大会参加要項
編集後記
荒井 伸夫

今月のメッセージ

東京大会に集い、生き方を考え合おう

常任委員 宮原 廣司


生き方を考え合うことが、今、本当に大切になっているのではないでしょうか。

まずは、私の体験からです。私は定年後、縁あって大学の教職課程の特別活動、生活指導、道徳教育

の講座を担当してきました。教師として何をしたらよいかがわかるようにと、自分及び全生研の実践家

の実践を取り上げ、子どもをどう育てるか考え合ってきました。多人数にもかかわらず、受講態度も真

剣で、自己体験を織り混ぜた真撃なレポートを書いてくるのに感心してきました。

でも、履修学生の数パーセントしか教職に就けない(正規・臨採・講師も含めて)現実の中で、「教員

になれなくても、自分の子育てに生かします」という感想に接して、心が痛みました。反面、資格を取

るだけに終わりかねない講座に、どうしてそう真剣に参加するのか不思議に思ってもいました。

最近、ある専任の教官の方が、「教員採用が厳しいのに、教職課程の講座に学生が集まる異変が起きて

います。どうも、専門学科の時間は、ただのエキスパート養成でつまらない。教職課程の講座は、生き

方が考えられておもしろいということのようです」と語られるのを聞いて、なるほどと思いました。

受験競争を勝ち抜くことしか勉強目的を持てなかった学生たちが、これから先の自己の生き方をひら

くものを欲して、それを考える学びの場を講座に求めているのは、自然のことではないでしょうか。

私たちの生活指導実践が、現代社会の矛盾の中で、さまざまな問題をかかえこまされた子どもたちと

共に、自己と他者との自己実現の場をつくり出し、共生の道を探っていこうとするものだからこそ、学

生が生き方探求の思いで真剣に参加してくれているのでしょう。そう思うと、「教師になれなくても……」

という言葉を前向きに受け止めることができて、少し肩の荷が軽くなりました。

しかし、同時に、この学生の要求から、今なぜ生き方を考えるのかが問われているように思います。

今、グローバリーゼーションが言われ「構造改革」が声高に叫ばれ、それに対応する「教育改革」な

るものが進められようとしているけれど、それはいったいどういう生き方を我々にもたらすのでしょう

か。端的にいえば、国境も規制も取り払って、地球規模で効率のよい経済をつくるために、自由に競争

し合っていこうというものでしょう。その競争に勝つためには、無駄なコストを思いきって削減してい

くリストラを進めなければならない。その競争に勝ち残っていくために、行政に頼らず「自立自助」の

生き方を求めていく、というのが「構造改革」のようです。

しかし、それが本当に我々に幸福をもたらすのでしょうか。経済効率を追求する競争は、人間を置き

忘れた競争を強め、資本力のある強者が勝ち残り、弱者が切り捨てられる体制を強めます。

現に、コスト削減のために、弱者保護の福祉は切り下げられ、人類生き残りを賭けた地球温暖化防止

の京都議定書すら、強者のアメリカの立場維持のために批准破棄という身勝手にもて遊ばれています。

「あなたの思い描く21世紀像」のアンケートに、49%の中学生が「今よりも便利だが住みにくい世界」と

答えた(B&G財団調査)というのも、そういう現実への不安の表明ではないでしょうか。

私は、古い本ですが、吉野源三郎の『君たちはどう生きるか』が好きで、中学生と読んできました。

たれもかれもが力いっぱいに/のびのびと生きていける世の中/たれもかれも「生まれて来てよかっ

た」/と思えるような世の中/じぶんを大切にすることが/同時にひとを大切にすることになる世の

中/そういう世の中を来させる仕事が/きみたちの行く手にまっている/大きな大きな仕事/生きが

いのある仕事

こんな彼の言葉を紹介するのが口はばったくなる現実だからこそ、教育は未来をつくるものとして、

今、子ども・青年たちと生き方を考え合うことを課題とする必要があるのではないでしょうか。

そのために、21世紀の初頭に、矛盾のルツボの首都・東京で開く全国大会に、みんなで集い、子ども

を導く我々自身の生き方を考え合いましょう。多数のみなさんのご参集をお待ちしています。

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