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ある不登校生徒の戦い
全生研常任 栗城 順一
「『教室に行こう』、そう何度も思っていました。負けたくないと思って学校に少しずつ行くように頑張りました。学校に行った時はよく具合が悪くなりました。でも、私一人が辛いわけじゃない。そう自分に言い聞かせて学校に行きました。今でもたまに頭が痛くなったりするけど、頑張れるのは相談室の友達や先生がいるからです」
裕子は小学校で不登校になった。中学に入学したら「絶対に学校に行く」と決意は固かったが、登校できずにいた。
「小学校の時と何も変わらない、成長していませんでした。小学校と同じ蟻地獄にはまってしまった」と当時を振り返る。
「学校が嫌で、人とか嫌で、自分も嫌になり、学校に行きたくありませんでした。でも、それは逃げだ、現実逃避だとわかっていました」
中学二年になり、学校内の相談室に通うようになった。毎日ではないが、登校の日数も増えていった。それでも裕子は「私はここで何をしているのだろう。なんで教室じゃなくてここ(相談室)にいるの」と自問自答を繰り返していた。その当時の葛藤をこうも記している。
「あの時なんで学校を休んじゃったんだろうといつも後悔ばかりでした。今更後悔したって遅いのに、時間が戻るわけじゃないのに。そう思っていても後悔は止みませんでした。学校に行かなきゃと心の中で思っているのに、行動に移すのは難しい。学校に行くことは時に地獄のようでもありました。でも、このままずっと閉じこもっていてもどうにもならない」
「教室に行こう」。中学三年になり、そう決意した裕子は教室に通い始めた。「負けたくない」という気持ちが裕子を少しずつ教室へと近づけた。
何よりの支えは「友達と先生」と語る。
「辛い時によく話を聞いてくれて、私の気持ちをわかってくれて、いっぱい助けてもらいました」
裕子が自分を受け入れ、学校という社会に参加してみようと勇気を出せたのはなにか。
裕子のなかの内なる声、閉ざされた声に心を配り、それに丁寧に応答してくれる他者(友達や先生)がいたからであり、その他者を通じて少しずつつながることを学んだからである。
そうだとすると、なによりも「ケア(配慮)と応答」をつくりあげていくこと、それをつうじて、子どもたちの対話と子ども自身の自己対話を豊かに展開することである。そうしたことを実践の軸にして共に生きるに値する共同の世界を創りだすのである。
相談室、班、小グループなど、どんな形であれ、居場所、拠り所をつくり、交流と交歓の場を生み出すことなしに、自治的空間を創りだすことはできないのが今日の子どもたちの状況である。
裕子は最後にこう締めくくっている。
「人生をやり直したい。こんな人生嫌だ、といつも思っていた自分が少し後悔しなくなりました。たぶんそれは、相談室の友達やいつも話を聞いてくれた先生と出会えたからだと思います。こんな自分でもいいかなぁって少し思うようになっています」
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