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今月のメッセージ
若手教師とベテラン教師の異世代間協同から新しい学校づくりへ
和歌山大学教育学部 船越 勝
近年、大都市部を中心に、教員の大量採用が続いている。職場の高齢化が長年問題にされてきたが、若手教師が職場に配置されるなかで、職場の教員の年齢構成も大きく変わって来つつある。しかし、若手教員の大量採用のなかで、私たち教師をめぐる今日の問題が新たに見え始めてきたとも言える。それは、新たに採用された少なからぬ若手教師が、実践的な困難を抱えているということである。
せっかく正規採用になったにもかかわらず、実践的な困難から、休職や退職を余儀なくされる若手教師は、決して一部ではない。ある教育委員会では、新採教員のうち約20%が1年以内に退職したという状況もあるのである。しかし、こうした状況は、若手教師に顕著に表れている状況であるとともに、同時に、私たちすべての教師にかけられている「攻撃」としてもとらえていく必要がある。
では、こうした若手教師の自立をどのように構想すればいいのか。いいかえれば、そもそも教師になるとは、どういうことなのであるか。それを三つの立場に分けて、見てみよう。
第一は、「制度的な自立」である。具体的には、教員採用試験に受かることが教師になるという意味にとらえるものである。つまり、最も日常用語のレベルでの意味を示している。しかし、この立場では、教師とはそもそもどのような関わりをする存在なのかという本質的な問いかけがない。
第二は、「体制的自立」である。これは、学校や教員を支配しようとする勢力に合わせた「自立」で、今日、様々に強められている傾向である。この立場は、むしろ自立というより、服従ないし従属といった方が、問題の本質をよく表している。
第三は、「関係的な自立」である。それは、子どもや保護者に教師として、人間として関わり続けるなかで、未熟ではあっても、「一人前の教師」として認めてもらうことによって、教師になるととらえる立場である。私たちは、基本的にこの立場で、教師の自立を考えるものである。
私たちは、今日の教員の大量採用時代を、否定的にではなく、若手教師とベテラン教師による異世代間協同による新しい学校づくりの可能性が広がる状況ととらえたい。そして、そのためには、次のような三つの若手教師が育つ「場」を創ることを大切にしていきたい。
世代間継承という視点から見れば、若手教師を育てるのは、個々人の問題ではなく、学校というコミュニティの存続をめぐる課題だととらえることが重要である。さらにいえば、私たち市民社会のあり方にも関わってくる。したがって、若手教師が育つ「場」づくりとして、まず第一に、職場づくりが問われなければならない。さらには、組合分会、サークルづくり、教師の個人が行う塾など、様々な「場」で、それぞれの持ち味を生かしながら取り組まれる必要性がある。
第二に、若手教師の関係的自立を追求する実践は、同時に最も困難な生徒を見捨てずに、学校全体として取り組む体制を創ることであり、言い換えれば、学校づくりのプロセスそのものである。私たちは、かつて1970年代に若手教師の大量採用を受けとめるなかで、学校づくりと民間教育運動の発展を創り出す経験をしてきたが、いまその状況の再構築が求められている。
第三に、そのためには、戦後の民主教育を担ってきた団塊世代の役割が、今日とりわけ重要である。団塊世代が行うべきことは、上述の課題の先頭に立つことである。それは、「教師塾」による教師の自立の「囲い込み」に抗して、体制的自立ではなく、関係的自立へと若手教師を開いていくとともに、戦後教育の「理想」を守り、発展させていくことにもつながっていくのである。そうした志を持って、これからの生活指導実践と運動に取り組もう。
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