- 特集 〈発達障害〉と子どもの苦悩〜理解・支援の一歩は教師から〜
- 特集のことば
- 〈発達障害〉と子どもの苦悩〜理解・支援の一歩は教師から〜―
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- 実践
- 小学校/にじ色のクレヨンたち―竜太との一年
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- 小学校/みんな味方なんだよ
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- 中学校/「支援される立場」から「集団の主人公の一人」として生きる世界へ
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- 分析
- 三氏の実践から考える実践課題
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- 論文
- 特別支援教育とインクルージョン―巡回相談の現場から―
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- 第2特集 担任外の学級・学校づくり
- 教務主任の立場から
- 公立小学校教師という仕事
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- 教育相談員専任の立場から
- 嵐の夜は明けるのか―アラシの「暴力」が意味するもの
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- 副担任と担任の立場から
- 「異常事態」からの再出発
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- 実践へのコメント
- 新しい学校づくりの展望を拓く―担任外教師の役割―
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- 今月のメッセージ
- 集団づくりにおける言葉
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- 私の授業づくり (第12回)
- 小学校(道徳)/みんなよくなりたい。
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- 中学校(道徳)/「ホームレス殺害事件」を考える
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- 実践の広場
- 子ども文化の世界
- 子どもの文化からスタート
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- 貧困・格差と子どもたち
- 「人と人のつながり」をつくる
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- 学級のイベント
- 生活改善運動をイベントとして集団的に取り組む
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- 学年・学校行事
- 「願い・語り・集い」の学年夕涼み会
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- 部活動・クラブの指導の工夫
- とおるの友達づくり
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- 職員室の対話
- 職員室に、「愛と勇気と友情」を
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- 手をつなぐ―親と教師
- 継続は力なり!―『大空へ飛べ』の取り組み
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- 私が教師を続けるわけ
- 「じたばた」、そして「まあいっか」
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- 若い教師のメッセージ
- 臨時講師だけれど…
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- 子どもの「言葉」をすくい上げる
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- 案内板 集会・学習会のお知らせ
- 教育情報
- 『スクールソーシャルワーカー活用事業』の導入と生活指導
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- 風の声―この人に聞く
- 「民主主義」が息づき、人に優しい国を旅して
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- 読書案内
- 『子どもの貧困白書』
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- 読者の声
- 1月号を読んで
- シリーズ/各地の実践
- 埼玉
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- 〜仲間とともに〜
- 2009年度既刊目次
- 編集後記
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今月のメッセージ
集団づくりにおける言葉
愛知教育大学 折出 健二
本号が届く頃は、二〇〇九年度終了に向けて慌ただしいながらも、この一年の生活指導実践をどう振り返り、次年度にどうつなげていくか、実践家としてすでに考えておられる頃だと思います。以下では、私なりの視点を三つ挙げてみます。
敢 生活指導・集団づくりを、言葉の果たす教育作用と意味から省察してみよう
経済的・文化的な格差、そして関係性の崩れなどを背景に、クラスの中で子どもたちの問題もさまざまに起こっています。文部科学省が昨年十一月末に公表した全国調査結果で、二〇〇八年度の「暴力行為」では、小中学生共に発生件数が増え、特に小学校高学年と中学一・二年で際立っています。これらに共通する背景の一つに、子どもが自己表現の機会を失い、他者とつながる言葉を持てないでいること、周りの者による暴力と抑圧によって言葉自体を奪われていることがあります。
当事者である子どもとどうつながるか。それは、子どもに働きかけるあなたの言葉がどのように子どもの置かれている状況をつかみ、その状況下で子どもを(後ろ向きではなく)前に向かわせる方向づけができるか、にかかっています。実践における教師の言葉は、子どもの中のモヤモヤ、先の見え無さを概念化し、現実を可視化するツールをその子に渡す、という決定的な作用を持っています。全生研の旧理論体系にあった「班」「核」「討議」の三側面は、いずれも教師の指導行為にともなう言葉の教育力を柱としています。それを「技術」として解釈する際に、中には指示や問いかけの「仕方」(まさに型)として読み込んだ人がいて、そこから「集団づくり」の技術が子どもを「動かす」操作のスキルに変質したのです。そうではなく、その指導によって子どもとの関係性をどう意識化するか、つまり、教師である「わたしの言語」は、子どもにとっては自己の未知な局面を拓く「他者からの誘いかけ」として伝わっているのか、を意識することが肝要です。
新しい「子ども集団づくり」論では、言葉と対話を重視しています。全生研編の『子ども集団づくり入門』をその観点からぜひお読み下さい。いま必要なのは、関係性を構築する主体は教師と子どもであること、この水平的関係を基にお互いが現実を意味づける言葉を取り戻し、困難や行き詰まりの中にひそむ「窓」を思想化する知の形成によって、自分たちの学びの世界を築き上げていくことです。
ところが、この課題の意味を的確に読めないために、対話論を「話し合い主義」ととらえて過小に評価する研究者や実践家がいます。このひとたちは、問題を抱えている子どもが、教師の語りかける言葉によって自分の中で渦巻く憤りや反発の思いを応答へとせり上げるきっかけをつかみ、そこから問題が読み解かれ、ひらかれていく変革過程を見ていないのです。昨年九月に逝去された竹内敏晴さんが最後まで追求した「ことばが劈(ひら)かれる」というテーマは、実は、集団づくりの世界でもずっと底流にあるテーマなのです。それを個人の内面世界にとどめず、個人と個人をつなぐ要求と応答、支援と自立というこの集団的な場の関係性として劈いていく、としたところに全生研の方法論の独自性があります。しかも、ここには他者とつながる行動が意識を変え、その意識化(自覚化)があらたな行動を生み出すという弁証法が見事に働いています。
さて、紙数が尽きましたが、次の二つは、視点のみを挙げておきましょう。
柑 学級づくりをめぐる同僚との対話を、互いの子ども観を通い合わせる目で見直してみよう
桓 保護者の抱える生活現実を、その中にあるたたかいの目で見つめ直そう
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- 明治図書