- 特集 「困った子」に寄りそうリーダーと集団づくり
- 特集のことば
- 「困った子」に寄りそうリーダーと集団づくり
- /
- <小学校>良男とともに育つ学級の子どもたち〜そこからリーダーが育っていく〜
- /
- <小学校>「助けて!」が言える子をリーダーに
- /
- <中学校>みんなが安心できる居場所
- /
- <中学校>追い詰められた学年状況に果敢に挑んでいくリーダー達
- /
- <分析論文>寄りそうことを通して集団が直面する課題に挑むリーダー
- /
- 第2特集 「習熟度別少人数指導」は、いま
- <報告・小>同僚との授業づくりの契機とする
- /
- <報告・小>揺れながらTTとして共同できたこと
- /
- <報告・中>「素朴な思い込み」と習熟度別授業の実際―習熟度別授業を六年間行って―
- /
- 《論文》習熟度別少人数指導の現状と授業改善の課題
- /
- 今月のメッセージ
- 足下からのリーダー論
- /
- 私の授業づくり (第23回)
- 小学校〈総合〉/米作りを通して見えてくるもの
- /
- 中学校〈社会科〉/参議院選挙に参加しよう!〜学年一二八名による模擬投票〜
- /
- 実践の広場
- 子どもの生活・文化・居場所
- 学級レクの企画から
- /
- 子どもをつなぐ活動・行事
- 「文化祭」が子どもを地域につなぐ
- /
- いきいき部活・クラブ
- 子どもたちの発想を大胆に生かした「学級内クラブ」
- /
- 手をつなぐ―教師・親・地域の人々
- 地域とつくる子どもの学びとくらし―「学校を支える会」の取り組み―
- /
- 私が教師を続けるわけ
- S先生へのメッセージ
- /
- 案内板 集会・学習会のお知らせ
- 追悼・坂本光男先生
- 身を削り、人々を励まし続けた教育者 坂本光男先生との別れ
- /
- 〈発達障害〉の理解と支援―学級・学校・地域を育てる (第11回)
- 子どもたちの放課後と地域生活の保障
- /
- 教育情報
- 日本学童保育学会の設立―学童保育実践研究のこれまでとこれから―
- /
- 読書案内
- 『田中正造と民衆思想の継承』
- /
- 北から南から
- サークルだより・大阪
- /
- 〜幌馬車の軌跡・ぱーと2〜
- 若い教師からのメッセージ
- 発信しよう!全生研若者の声!(2)
- /
- 地域生活指導へのアプローチ (第8回)
- 大きな夢と小さな一歩
- /
- 〜中3・夜の学習教室「魔女の森」〜
- 特別支援学校の現在と課題 (第3回)
- 学校に望むこと―障害者の生活の場から―
- /
- 読者の声
- 12月号を読んで
- 編集後記
- /
今月のメッセージ
足下からのリーダー論
愛知教育大学/折出 健二
いま、少子化のもとで、遊びを含む仲間集団の経験が殆どなく、人間関係には付きものの対立やゴタゴタを自前で乗りきる他者経験もない。ひとたび争いになると、排除いじめか、暴力になりやすい。こうした関係性の危機は、70年代、80年代のリーダーづくり論では予想しなかった状況である。
まず基本は、リーダーとリーダーシップを区別して理解することだ。リーダーとは、人を動かす役割を担う個人である。リーダーシップは、〈「人を動かしたい」という意図を持つ者と、「ついていこう」と決めた者との人間関係〉なのである(後掲リーダーシップ論、参照)。
では、いま、どのようなリーダーシップが求められるのか。私見では、その基本要素は三つある。
周りの仲間たちに肯定的イメージを与え、やる気にさせる。
大衆の要求と期待に応える行動を取る。
誰の話でも、しっかりとよく聴く。
小学生から高校生まで、この要素でリーダー指導を行うので十分である。その際、子ども同士の関係性をしっかりと観察する視点を持ち続けることが重要だ。
筆者は、四年間、教員職を離れ、国立大学の理事・副学長の任に就いてきた。まさに「職場(組織)臨床」だと自分に言い聞かせて。J・M・クーゼス、B・Z・ポズナー共著『大学経営 起死回生のリーダーシップ』(邦訳、東洋経済新報社)が大いに参考になった。原著者たちは、〈リーダーシップは「普通の人」が学習して身につけることができ、それは、自分と他者の一番良いところを引き出すプロセス〉だという。関係創造的なリーダー論である。
「仲間を動かしたい」と思う子どもと「ついていきたい」と思う子どもの関係性を、事実に即して読み開き、その関係の展開を意味づけ、どう行動すればよいかを当事者に助言し、方向づけること。これがリーダー指導である。滋賀大会の基調提案では、「アソシエーション」による集団づくりが提起された。アソシエーションとは、諸個人が自分たちの統治能力を発揮して(権力や制度からは自立して)自由に結びつき、目的を実現しつつ自己実現を図る社会的関係である。「協同関係」「結合(社会)」「結社」などの訳語があてられてきた。当然ながら、自治なしにそれは育たない。今まで以上に、子どもたちにとってわかりやすい、シンプルでリアルなリーダー指導が必要になっている。
鶴見俊輔氏は、自著『教育再定義への試み』(岩波現代文庫)のなかで、自身の思春期体験を語りながら、「たくさんのことをまなび(learn)、たくさんのことをまなびほぐす(unlearn)」と述べている。(同書、95ページ。氏は家庭の事情で、支配的な母親から離れるために、15歳からアメリカに留学する体験をしており、その英語感覚でunlearnにさらりと触れているのが、おもしろい。)
私たちも、リーダーについて、「アンラーン」を取り込む時なのだ。つまり、型どおりの「リーダー像」がまとわりついて、これにこだわって実践が硬直化している。それをいったんほぐして、自分の実践課題にあったものに編み込むのである。これが、リーダー指導に関する「まなびほぐし」だ。その契機は、目の前の子どもたちの、複雑で流動的な関係性、次々と変化する行動の中にこそ、ある。
一から十まで完璧に子どもに助言して、教師の描く「確かなリーダー」を教室に実現したい。そう思って、「今の子どものリーダー不在」を嘆いているとしたら、その教師こそ、「アンラーン」を行うべきだ。そうでないと、以後、ますます教師として壁にぶつかることは目に見えているからだ。
-
- 明治図書