著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
第二次の改革を取り入れた進化版「単元を貫く言語活動」を国語の授業に位置付けよう!
文部科学省教科調査官水戸部 修治
2014/4/24 掲載

水戸部 修治みとべ しゅうじ

 文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官、国立教育政策研究所教育課程研究センター総括研究官・教育課程調査官・学力調査官。小学校教諭、県教育庁指導主事、山形大学地域教育文化学部准教授等を経て、平成20年10月より現職。
 『単元を貫く言語活動のすべてが分かる!小学校国語科授業&評価パーフェクトガイド』『「単元を貫く言語活動」授業づくり徹底解説&実践事例24』『小学校国語科 言語活動パーフェクトガイド 1・2年』『小学校国語科 言語活動パーフェクトガイド 3・4年』『小学校国語科 言語活動パーフェクトガイド 5・6年』など、著書多数。

―全国的に「単元を貫く言語活動」を位置付けた国語科の授業づくりが進んでいると思いますが、実践が広がるにつれて見えてきた課題にはどのようなものがありますか。

 はい、全国すべての都道府県で、本当にたくさんの方々に支えられて、単元を貫く言語活動を位置付けた国語科の授業づくりが広がっています。実践が進むにつれて明らかになってきた課題として、大きく2つ挙げられます。1つは付けたい力にふさわしい単元を貫く言語活動を設定しなければ、言語活動は機能しないということです。もう1つは、せっかくそうした言語活動を位置付けても、いわゆる第二次は、言語活動とは無関係に教材文を場面ごと段落ごとに読み取らせてしまいがちだということです。

―その課題を解決するための有効な手立てはあるのでしょうか。

 たくさんの実践の成果によって、原因とその解決策が明らかになってきました。言語活動の特徴がはっきり押さえられていない場合、単元で付けたい力にふさわしい言語活動が設定しにくくなります。そこで学習指導案に、言語活動の特徴や付けたい力との結び付きを明記することが重要になります。特に、リーフレットなどの言語活動ツールを用いる場合は、教師の自作モデルを写真で撮って学習指導案に掲載し、指導事項との結び付きを図解する方法も開発されてきました。本書では、こうした図解資料が満載ですので、ぜひ参考になさってください。
 第二次の改革も急速に進んできました。教科書を読む第二次の単位時間内に、部分的に自分の選んだ本などを読む時間を入れた、「入れ子構造」やその発展形態の「ABワンセット方式」などです。本書ではその仕組みや留意点を解説するとともに、最先端の実践事例を豊富に掲載しています。

―本書では、「単元を貫く言語活動」が学習指導案の形で分かりやすく紹介されています。授業づくりの基盤ともなる指導案を作成するに当たり、教師はどのような点に注意する必要がありますか?

 優れた実践者の学習指導案を拝読すると、指導のねらいやそれを具体化する指導過程が、授業を見る前からありありと伝わってきます。付けたい力と言語活動、指導過程そして評価が一貫して、ずれることなく記述されているのです。そして子供たちにとっても必然性のある学習過程になるよう、細部まで気を配って書かれています。学習指導案は、それを初めて読む人にも伝わるかどうかを意識して書くことが、授業をより緻密なものにしていく上での鍵になります。本書では、まさにそうした学習指導案の具体的な書きぶりを参考にしていただくことができます。

―また「単元を貫く言語活動」ですぐに使えるワークシート例が豊富に掲載されています。シートの構造や評価規準についても解説が加えられているこの部分の活用方法を教えてください!

 本書に掲載のワークシートを見ると、単元を貫く言語活動と密接に関わるものになっていることをご理解いただけるでしょう。単なる空欄を埋める作業シートではないのです。子供にとって、単元を貫く言語活動に向けて必然性のある学習活動として、ワークシートの内容が構成されていますので、ぜひこの点を参考にしてご自身の授業づくりに生かしていただきたいと思います。
 また、ワークシートに子供が記述した内容が、単元の目標に準拠した評価を行う上で重要な資料となります。しかしその前提として、指導のねらい単元を貫く言語活動ワークシートの各項目が一貫しているワークシートを作成する必要があります。この点でもぜひ本書の事例を参考にしていただきたいと思います。

―全国で「単元を貫く言語活動」を位置付けた国語授業づくりにチャレンジされている先生方に一言メッセージをお願いします。

 授業づくりは一律のマニュアルに従って行うものではありません。変化の激しい社会を生き抜く力を育むために、目の前の子供たちにとって必要な国語の能力を絶えず見極めながら、その力を育むための指導方法を工夫していくことが重要です。
 本書で解説、紹介している「入れ子構造」「ABワンセット方式」なども、日々の授業改善の中から生み出されたものです。本書を読まれた読者の方々による新たな実践が、国語科の授業改善を一層推進していくことを願っています。

(構成:木山)
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