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社会生活の中では、様々な課題に直面したり、ストレスを抱えたりします。このような自分にとって不利な状況から回復する力、逆境を跳ね返す力のことを「レジリエンス」と言っています。
最近の若い先生方は非常に優秀で、「自分はできるべき」「失敗してはいけない」と考えている人が多くいます。しかし、近年の教育現場は、保護者の過剰な要求や、教師を軽んじる子どもの増加などで、教師の威厳が失われています。理想に燃えて教壇に立ってひと月もすると、「できるべき」という理想と、「できない」自分がいる現実とのギャップに苦しむことになります。そもそも、最初からできる教師なんていません。何年も何十年も教師をしていても、できないことや分からないことがたくさんあります。それが当たり前なのです。「できなくて当たり前、だからこそ学ぶ」ことが、実は教師として最も大切な力だと思います。今の若い先生方には、できない自分を受け入れる強さと、失敗や挫折から学び続けるしなやかさを身に付けてほしいと思います。
「こんなクラスにしたい」「こんな学力を身に付けさせたい」と、先生方は様々な方法で子どもを指導していることでしょう。そこで最も大切なのが、「教師の熱意や姿勢」といった、具体的な指導の核になる考え方です。子どもの「レジリエンス」を高めるためには、教師自身がどんなときも物事を前向きに捉え、逆境を跳ね返すしなやかさを持ち合わせておかなくてはなりません。子どものレジリエンスを鍛えるためには、教師自らがレジリエンスを鍛える姿勢を示すことが必要です。
30年間、学校現場で働いた経験から、「どんなに子どもの指導がうまくいかなくても、どんなに保護者との間に大きなトラブルがあったとしても、職員室が安心できる場であれば、課題に立ち向かう力は沸いてくる」と実感しているからです。つまり、同僚と良好な人間関係を築くことが、教師の力量を磨く機会を保障することになるということです。ですから、同僚の良いところを見たり、気になるところはサラリと流したりすることのできる力や、同僚の言動を好意的に受け止める力が、今後もさらに必要になると思います。
子どもを教え育てるということは、子どもが暮らす社会の中で、その子が充実した生活をし、将来幸せな人生をおくるために必要な力を身に付けさせることです。そのためには、厳しく指導し否定することも必要です。危険な遊びをすれば、「ダメだ」と厳しく禁じ、あいさつができなければ、「人としてなっていない」と否定し、人の話を聞いてしっかり勉強するようにしつける…。「もう無理だ」と、投げ出しそうになったら、叱咤してでも辛抱強くやらせ、怠け心に負けないように励まし続ける。最後の最後まで子どもの力を信じて待つ…。それが、子どもが持っている本来の力を引き出すことになるのです。だからこそ、今どきの子には、ちょっとやそっとのことでは挫けない強さや、挫折から立ち直る力が必要になります。その力である「レジリエンス」を鍛えるのは、他ならぬ教師です。ますます変化の激しい世の中で生きていく子どもたちのために、強くしなやかな心を育てようではありませんか。