- 著者インタビュー
- 社会
「誰一人取り残さず全員の学習権を保障する」「自立した学習者を育てる」という理念が重要だと考えています。理念を実現するための方法は無数にあります。どのようにアプローチしていくのかを模索し続けながら自分自身の「観」や「技」をアップデートしていくことを意識したいものです。
社会科は問題解決的な学習過程の中で、社会的事象の目に見える事実や目には見えない意味や特色を追究したり、社会との関わり方を選択・判断したりしていきます。子どもが追究を進める場面でそれぞれの子どもに適した学び方がよく見られます。子どもたち全員が社会科としての目標を達成できると共に、その子らしい学びを進められるよう、バランスをとる必要がありそうです。
考え方や歴史的背景も含めて、「個別最適な学び」について概観されたいのであれば「理論編」からお読みください。「理論編」の2章に記している「『個別最適な学び』を実現する14の勘所」は、どこからでも読んでいただけるように構成しています。目次を参考に、読者の皆様の関心の高い箇所から読んでいただけると幸いです。気になった所をその都度読むような辞書的な活用の仕方も考えられます。
「実践編」では「理論編」の考え方をもとに、単元を通しての授業デザインや各時間の子どもの様子について詳細に記しています。先に「個別最適な学び」の一つの形として授業イメージをしていただく場合は、「実践編」からお読みください。ご自身の実践の何かしらヒントになるのではないかと感じています。
いずれにしても、一冊にまとめようとしていたものを分冊していますので、行きつ戻りつしながら楽しんでいただけると嬉しいです。
ICTは教員と子どもが主に活用するものですが、教員の ICT 活用から子どもの ICT 活用も含めて拡大していくことが重要だと考えます。子どもが1人1台端末をもち、ICTを効果的に活用するようになると、子どもたちの学習する要素が複線化、多様化していきます。一人ひとりが選択を取り入れた学習を行うので、その学びのあり方は多種多様な形になります。30人いれば 30人の学び方が成立していくことになります。「個別最適な学び」や「協働的な学び」を促進、拡張してくれるツールがICT端末といえるでしょう。
ただ、その中でおびただしい情報量のやりとりをそれぞれの子どもが行うことになります。その学びを見取る教師の力量が今まで以上に試されることになり、子どもたちの多種多様な学びのあり方を支える教師の役割を考えることが重要になってくると感じています。
授業が激変するものではないと考えています。通常の一斉授業に加え、自由度の高い自己決定的な授業を増やし、子どもが一人ひとりの「学びの文脈」(状況やつながり)を大切にしながら学べるようにしていきたいものです。子どもたちが様々なタイプの授業を経験し、繰り返すことで子どもの学びが豊かになると考えます。教師が柔軟な授業スタイルをもつことの重要性を感じています。
特に社会科では、子どもたち自身が「問い」を自分のものにして仮説を立てること、追究していく中で目には見えない意味や特色を見出すこと、自分の学びの跡を俯瞰し自己評価することが、今後さらに重要になってくると考えます。その手立てやヒントの詳細を知りたい方は、ぜひ本書をお読みください。
教師自身が学び続ける者であり、子どもと共に歩み続ける者であることが大切です。そうすることで、きっと見える世界が変わってきます。「個別最適な学び」について考えることは、子どもの学びについて問い直すと共に、教師自身のあり方や成長をふり返ることではないかと感じています。また、私は本書を執筆することで、一人ひとりの「個」を見つめ、その子の成長と幸せのために授業があるのだという原点を再確認することができました。
子どもを中心にした実践を共に続けていきましょう。本書を通じて多くの方々と対話できる機会を楽しみにしています。