5分でクラスの一体感をつくる!山ちゃんの 導入deボディパーカッション&ボイスアンサンブル
ボディパ教育考案者の山田俊之先生が、みんなの心が一瞬でつながる活動とスキルを伝授!
ボディパ&ボイス(6)
音程を気にせずクラスみんなが参加できる「ボイスアンサンブル」
九州大谷短期大学山田 俊之
2021/11/15 掲載

動画1 ボイスアンサンブル曲「楽しい学校生活」

演奏:愛知教育大学の学生のみなさん

音程が取れなくても大丈夫な合唱

 本日ご紹介した動画は、ボイスアンサンブル曲「楽しい学校生活」です。
 教科名や給食、遊びなど、学校生活にまつわる様々な言葉に合わせ、教科名のボードからひょっこり顔をだしたり、給食メニューのジェスチャーを織り交ぜたりと、愛知教育大学の学生のみなさんが、工夫して楽しく学校生活を表現してくれました。
 そして気付いた方もいらっしゃるかもしれませんが、このボイスアンサンブルの曲には、実は音程がありません。
 「ボイスアンサンブル」という言葉は聞きなれないかもしれませんが、私のつくった造語で、「音程がない言葉のリズム合唱」を、こうネーミングしました。
 ボイスアンサンブルは、リズムに乗って、グループ(または個人)で言葉を声に出して、一定のテンポに合わせて言葉をリレーしたり、重ねたりしてアンサンブルを楽しむ活動です。「合唱」と言いながらも音程がないため、聴覚障害や難聴の子どもたちも一緒楽しめるというのが大きな特徴です。
 近頃は、メールやLINEによる文字のコミュニケーションが中心になっていたり、そもそも対面でのコミュニケーションをとるのが難しい状況もありますが、顔を合わせて「話し言葉」のキャッチボールをすることも大切なコミュニケーションです。
 言葉のキャッチボールとして、ぜひボイスアンサンブルに取り組んでみてはいかがでしょうか。それでは、ボイスアンサンブルならではの3つの特徴をご紹介しましょう。

楽器の準備が必要ありません

 まず最大の特徴として、楽器の準備が必要ない、ということがあります。
 合奏の場合は、様々な楽器の用意が必要ですし、合唱の場合も、伴奏楽器が必要なことも多いかと思います。
 しかし、ボイスアンサンブルの場合は、ボディパーカッション同様に楽器は必要なく、文字を読みながら楽曲をつくり上げていくので、様々な活動の導入に、手軽にさっと取り組むことができます。

子どもたちの知的好奇心を刺激します

 ボイスアンサンブルには、「言葉」があります。「テーマ」があります。
 冒頭にご紹介した「楽しい学校生活」は、今年10月に刊行した『ボイスアンサンブル&ボディパーカッションdeリズム合唱』という書籍に収録した曲なのですが、こちらの本には、他にも、給食、乗り物、野菜、魚、日本の名産、世界遺産、世界の偉人などを様々なテーマの曲を収録しています。そして各曲には、テーマにまつわるキーワードをたくさんちりばめています。
 子どもたちが興味をもっているテーマや、今取り組んでいるテーマがあったら、その導入にぜひ、ボイスアンサンブルを盛り込んでみてください。テーマにまつわるキーワードが自然と記憶に残り、もっと知りたい、と興味関心が広がるのではと思います。ぜひ、子どもたちの知的好奇心を刺激してほしいと思っています。

インクルーシブ教材としても最適です

 冒頭でもお伝えしたように、ボイスアンサンブルは音程がないので、聴覚障害の子どもたちも積極的に参加することができます。歌が大好きな聴覚障害の子どももたくさんいますので、ぜひ心のハーモニーを響かせてほしいと思います。
 また、ボイスアンサンブル曲では、途中で簡単なボディパーカッションの部分を入れています。もし言葉が上手にしゃべれない子は、手拍子やおなかなどをたたくだけの参加もできます。
 一つの教室の中で、健常児とともに様々な障害をもった子どもたちが一緒に学ぶ機会が増えています。すべての子どもたちが一緒に参加することで、クラスの一体感をつくってほしいと思います。

 子どもたちは、元気一杯声を出したい!と思っています。ぜひボイスアンサンブルで、もっと気軽に合唱を楽しんでみてください。

導入を成功させるポイント

  1. 曲を選ぶ際は、ぜひ子どもたちが興味をもっているテーマから選曲しましょう。
  2. 一緒に同じ言葉を発することと、音程に関係ないことが、子どもたちに安心感をあたえます。もちろん、手拍子だけの参加もOKです。
  3. みんなと一緒に音楽をつくっている喜びを感じることが大切です。うまくできなくても、あまり気にせず取り組んでください。

山田 俊之やまだ としゆき

九州大谷短期大学教授、福岡女学院大学非常勤講師(教職課程)。小学校、特別支援学校、九州大学(非常勤:教職課程)、九州女子短期大学(教授)勤務を経て現職。九州大学大学院博士後期課程修了(教育システム専攻)。
1986年小学校4年担任の時、ボディパーカッション教育法を考案し、現在まで活動を継続。
著書『ボディパーカッション入門』(音楽之友社)、『ボディパーカッションdeクラスづくり』『特別支援教育deボディパーカッション』『保育園・幼稚園deボディパーカッション&リズム遊び』(以上明治図書)他多数。研究テーマは「子どものコミュニケーション能力を高めるリズム身体活動」「ボディパーカッション教育」「特別支援教育」「発達障害支援」。
2005年ボディパーカッション曲「花火」が平成17年度「小学校音楽科教科書」(教育出版)に掲載。
2014年ボディパーカッション曲「手拍子の花束」が平成25年度「特別支援教育用教科書」(文部科学省編集)に掲載。

最近のボディパーカッション教育関連活動
2015年カンボジア教育支援を始め、2018年NHKBSワールドニュースで取り上げられる。
2017、2018年ウイーン国立歌劇場で作品発表。
2019年九州大学、国立音楽大学、広島大学学生合同のカンボジアスタディツアーを実施。
2019年ニューヨークカーネギーホールで作品発表。
2019年NHK「パプリカ」インクルーシブ教育プロジェクト「フーリン楽団」でボディパーカッション指導を行う。
この時、フーリンメンバーや様々なハンディ(聴覚、視覚、発達、ダウン症、自閉スペクトラム、小児がん他)の子どもたちへの指導に関わる。
コロナ禍のため、2020年大阪府立和泉高校の合唱に代わって「校内ボディパーカッションコンクール」を指導する。 

(構成:木村)
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