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とぼけたり、理解できないそぶりをしたり
こうなると、子どもたちは、“先生はこれを言ってほしいんかなぁ”と予想して考えを発表するようになったり、教師の話さえ聞いていれば授業が理解できるので、友だちの意見を聞かなくなってしまったりします。さらに、こうした状況が続くと、子どもはどんどん発表しなくなっていきます。意見を発表しなくても、授業が進んでいくからです。
そこで僕は、教師は正しい意見に対しても、ときにはとぼけたり、理解できないそぶりをしたりすることが大切だと思います。そうすることで、子どものフラストレーションが高まり、「だからぁっ!」と言いながら、より詳しい説明をいろんな表現でしようとするようになるからです。
とぼける場面はいろいろですが、僕がやってみた2つの実例を紹介したいと思います。
先生はそう思わんけどなぁ…
社会の工業の学習で、関連工場について考えた授業でのことです。
ある子が、「関連工場は、自動車工場の流れ作業の一部みたいだと思いました」と意見を言いました。発表の序盤にこういうしっかりした意見が出てきたので、「そうかなぁ? 先生はそう思わんけどなぁ…」と僕は言いました。
すると、クラスの多くの子どもたちが、「Aさんの発表は正しいと思う!」と言い出したので、僕はさらに、「なんで?」と聞きました。すると、子どもたちが、そう思う理由を、これまで調べたことから必死になって口々に説明し始めたのです。
今の説明、わからんなぁ…
次は、算数の時間のことです。
問題を解いて、自分の考えに自信たっぷりの子がいます。その子を指名すると、一生懸命自分の考えを発表しました。深い気付きがあり、すばらしい発表でしたが、説明が長いうえに、早口でした。
そこで僕は、説明が理解できていなさそうな子に「今の説明わかった? めっちゃ難しくてわからんかったよなぁ」と話しかけました。すると、話しかけられた子は、「うーん、難しかった」と言います。さらに僕は、クラス全員に「大事なこと言ってるような気がしたけど、どうしたら伝わるかなぁ?」と尋ね、どうすれば伝わるかをペアで話し合う時間を設けました。
するとその後、先ほど発表した子は、「昨日学習したノートを開いてください」と自分の考えの根拠になる部分を指しながら説明しだしました。
ここで僕は、自分の考えがどうすれば人に伝わるのか、いくつかのスキルを指導しました。
- 根拠になる部分を「見てください」と言ってから説明に入る
- 板書を指さしたり、自分で板書したりしながら説明する
- 途中で「ここまでわかりますか?」と全体に聞く
- 簡単な計算は「2×3はいくらになりますか?」などと全体に聞く
- わかるところまで発表して、そこからは交代してもらう
これらは、一度に指導するのではなく、一週間に1つ程度ずつ定着させていくのでもよいと思います。
よい意味で教師を頼らなくなる
このように、教師がとぼけることは、子どもたちが「もっと上手に説明をしたい!」と思えるようになり、人に伝わる話し方のスキルを指導するきっかけにもなります。
また、こうしたことを続けていると、教師がどのように反応するかを、子どもたちが必要以上に気にしたりしなくなります。“どうせ先生はデタラメ言ってる”と思うからです。よい意味で教師に頼らなくなり、自分たちで考えるようになっていくわけです。