著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
解決作れば問題消える。希望と資源のあるもの見つけ。
千葉県柏市立増尾西小学校教諭岩田 将英
2014/12/24 掲載
今回は岩田将英先生に、新刊『ポジティブ学級に変える!解決志向アプローチ入門』について伺いました。

岩田 将英いわた のぶひで

1976年東京都生まれ。柏市立増尾西小学校教諭。千葉大学教育学部卒。鳴門教育大学大学院学校教育研究科教育臨床コース臨床心理分野修了(長期研修)。臨床心理士。学校心理士。上級教育カウンセラー。ガイダンスカウンセラー。NPO千葉県教育カウンセラー協会常任理事。学校教育や心理臨床といったカテゴリーにこだわることなく、人間の成長に寄りそい、見守る“働き”に一生を捧げたいと考えている。千葉県船橋市および柏市公立小学校、千葉大学教育学部附属小学校勤務を経て現職。

―「解決志向アプローチ」とは、あまり聞き慣れない言葉なのですが、どのようなものか教えてください。

 解決志向アプローチとは、カウンセリング心理学の1つの考え方です。その解決志向面接の考え方を心理面接だけでなく、教育・福祉・産業などの分野に応用したものを含めて、解決志向アプローチと言います。問題の原因となっている事柄を探したり、その事柄を無くしたりするのではなく、問題が解決した後の状態を、保護者や子どもの中にある資源を基にデザインして、作りあげていく方法です。

―「解決志向アプローチ」の考え方を学級経営に取り入れると、なぜ学級が明るくなり、ポジティブになっていくのでしょうか。

 解決志向アプローチは「すでにできていること」や「本人の資源」から問題解決を進めます。すると「自分たちは解決する力をもっている」という自信が生まれます。そして、実際に有益な努力をするので、問題は解決します。その解決志向のサイクルが子どもたちの中に身に付くと、問題の原因や過去にこだわるのではなくて、自分たちがこれからどうしたいのか、そのために何ができそうか、何ができているかを考えるようになります。
 

―「解決志向アプローチ」、大変興味深いのですが、すぐに「問題志向」から「解決志向」へと考え方を変えるのは難しそうだと感じます。「解決志向」で物事を考えるためのコツなどはあるのでしょうか。

 2つあります。1つは、自分以外の人の力を借りることです。私は妻に「『どうなったらいいの?』って言って!」と、協力をお願いしています。妻が「どうなったらいいの?」と私に尋ねます。その妻の問いに対して答えていくと、解決志向でゴールを描くことができます。これは、友だちに言ってもらってもいいと思います。もう1つは、解決した姿を紙に描くことです。具体的にゴールをイメージできれば、一歩ずつ解決していきます。

―先生が学級担任としてお過ごしの中で、「解決志向アプローチ」の考え方を活用したことでうまくいった、という印象的な事例を一つ教えてください。

 前年度に教室からの飛び出しや、友達への暴力、教師への暴言などがあった、多動傾向の児童が、いつのまにか着席をして授業を受けていたことです。問題が起きている時ではなく、問題が当然起きるはずなのに、「例外的に」起きていない時には何があるのかを明らかにしていきました。そこで明らかになった資源を活かして、例外的な状況を意図的に起こし、繰り返していくことで、いつのまにか問題状況が無くなっていました。

―「ポジティブな学級にしていきたい!」と願って本書を手に取った読者の方に、メッセージをお願いします。

 ポジティブな学級とは、ネガティブな要素が無いということではありません。むしろ、どんなに困難な状況でも、わずかに存在するポジティブな点を子どもたちと一緒に見つけ、それを大切に育てていける学級のことです。そのためには、教師自身が、困難の中に点在するポジティブな「希望」を見出だすことができ、かつ、その「希望」を信じる力をもつことが重要です。解決志向アプローチのスキルがきっとあなたの役に立つと思います。

(構成:茅野)
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