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ブラジル人等の不就学児に日本語教室の支援―文科省
kyoikujin
2009/5/13 掲載
Welcome to 日本語教室―外国からきた子どもたちに日本語を教えるボランティア

 昨年の記事でも取り上げたように、景気の悪化により外国人労働者の失業者が増え、その子弟が経済的な理由から不就学児童となる事態が問題視されている。この状況に対し文科省は、定住外国人の子どもがスムーズに公立学校へ転入できるよう、日本語指導等を無料で行う支援教室の設置を計画している。

 平成2年の改正入管法で3世まで就労可能な法的地位が与えられてから、静岡県や群馬県では多くのブラジル人労働者が定住するようになった。彼らの子弟のうち、日本語を話せないなどの理由で公立小学校に通わない子どもは、未認可のブラジル人学校に通うケースが多い。
 しかし、昨年秋からの世界的な不況の影響で、外国人労働者の雇用が悪化。親の失業で3〜4万円の月謝が払えず、ブラジル人学校をやめざるを得なくなった「不就学」の子どもが増えているという。

ブラジル人学校の子ども4割減、その多くは不就学に

 文科省は対策を講じるために緊急調査を行った。3月発表のブラジル人学校等の実態調査研究結果について(PDF)によれば、ブラジル人学校に通う子どもの数は、昨年12月からの2ヶ月で約4割が減少した。回答を得られたのは86校のうち58校で、12月に6373人いた在籍者が、2月の段階では3881人となっていた。
 通わなくなった2492人のうち、1718人の現状を調べると、本国に帰国が722人(42%)、自宅待機・不就学は598人(34.8%)で、そのうち就学年齢にある子どもは422人(24.6%)。不明の10%も合わせると、学校に通えなくなった子どもの3割から4割が、不就学の状態にあると考えられる。公立校への転校は160人(9.3%)にとどまった。

「虹の架け橋教室」で無料の援助―文科省案

 このような状況に対応するため、文科省は不就学の外国人児童を支援する当面の対策を取りまとめ1月30日に発表、4月16日には新たな内容を加えた支援策を、内閣府の「定住外国人支援に関する対策の推進について」の中で発表した。
 その目玉は「虹の架け橋教室」(仮称)。子どもたちが公立学校にスムーズに転入するための、日本語授業等を行う支援施設となる予定だ。
 ポルトガル語ができる地域の人員を先生役に、NPO法人や自治体に教室を開いてもらう構想で、子どもたちを中心としたブラジル人コミュニティと地域社会の交流の促進もねらっている。文科省は3年程度続ける予定で、補正予算案にも約37億円を計上した。
 その他にも、市町村による経済的援助や、ブラジル人学校等の授業料軽減のための助成等も、支援策には盛り込まれている。

 不就学児童の実態が把握しづらい、ブラジル人学校への直接支援が行えないなど、いくつかの課題は残されているが、どの問題においても自治体の協力は不可欠だ。4月24日の文部科学委員会の会議録によれば、ブラジル人集住都市である浜松市は、塩谷文科大臣の選挙区であることもあり、文科省と直接連絡を取りながら具体的な対策を図っているという。一方で、自治体によっては外国人子弟の教育への理解が進んでいないとの指摘もあり、今後は多くの地域で、一人でも多くの子どもが教育を受けられるよう、文科省の施策と指導に期待したい。

この記事は、『きょういくじん会議』の記事を移転して掲載しているため、文中に『きょういくじん会議』への掲載を前提とした表現が含まれている場合があります。あらかじめご了承ください。
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