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「食育」に求められるものとは? 20年度食育白書を読む
kyoikujin
2009/5/31 掲載
平成20年版 食育白書

 26日の産経新聞の記事は、同日に平成20年度食育白書が閣議決定されたことを伝えています。記事の中では、30代の男性が朝食を抜く割合が増えていることが指摘されていて、07年10月の記事でご紹介したように、朝食を食べる子どもたちは増えていることとは対照的です。

 食育白書は「国民運動としての食育の推進」(第一章)や「家庭における食育の推進」(第二章)など全七章で構成されていて、食に対する意識を高めるため、家庭、学校、地域や社会など、多方面から食について述べられています。「学校、保育所等における食育の推進」(第三章)を例に、今回決定された白書と平成19年度の白書を見比べてみると、19年度版が概論やデータの検証に重きを置いているのに対し、今回のものはそれらに加え、7例挙げられている「栄養教諭による食に関する指導実践事例」など、小中学校から大学と、実際に現場の学校での実践例を多く挙げていることが印象的です。食育に対する意識が高まっていて、何か取り組みたいという学校は増えているであろう一方で、どのように取り組めば成果が期待できるのかと戸惑いもあるのでは? 白書がより具体的になっているのは、そうした声に応えようとしているから、と思えます。

 また前回の白書では扱っていないデータとして、今年3月に公表された、「普段の食生活で心がけていること」に関して日本、韓国、アメリカ、イギリス、フランスの5カ国の若者がどう捉えているかを紹介しています。これは第8回世界青年意識調査について(PDF)を受けたもので、「家族、友人とコミュニケーションをとる」、「栄養バランスのとれた食事をする」などの項目があり、日本の若者は総じて食に対する意識が高いことがうかがえますが、一方で「自分で食事を作る」という調査項目では唯一最下位であることが印象的です。これだけですぐに断言はできませんが、食をあくまでも消費者側として捉え、食事することを楽しみたいが、生産側にはさほど関心を持っていない、とも読み取れるのではないでしょうか。

 食育基本法第1章第2条では、「食に関する感謝の念と理解」を高めることが求められています。感謝の念と理解を高めるためにも、食べ物の生産過程や届くまで、といった食べる前の段階のことをより深く知っていく食育が求められるのではないでしょうか。

この記事は、『きょういくじん会議』の記事を移転して掲載しているため、文中に『きょういくじん会議』への掲載を前提とした表現が含まれている場合があります。あらかじめご了承ください。
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