きょういくじん会議
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大学生の就活・・・早期化・長期化に歯止めかかるか
kyoikujin
2010/11/25 掲載
就活格差

 大学生の就職活動の早期化・長期化が、社会問題化している。
 高木義明文部科学相が10月に経団連などに早期化是正を申し入れるなど、政府も働きかけを始めていることに加え、商社の業界団体である「日本貿易会」が、「学生に勉学に集中させるため、新卒採用活動の時期を従来より4カ月程度遅らせよう」という趣旨の提言「新卒者の採用活動に関する基本的考え方」を2010年11月17日にまとめたことが関係者に注目されている。

「就活」早期化の要因とは?

 2009年3月15日のきょういくじん会議でも紹介しているが、1997年に就職協定が廃止されてから、大学生の就職活動は年々早期化しているといわれている。それは、就職協定の廃止後も、日本経済団体連合会が就職活動に関する「倫理憲章」を毎年見直し・発表しているが、この憲章は就職協定のようには企業説明会の開始時期などをしばらないためである。
 また、「倫理憲章」対象外の外資系の企業の進出に対抗し、優秀な人材を他社に奪われないようにするためにも、就職活動のは年々早期化しているとみられている。

「就活」の早期化の影響は?

 では、「就活」早期化のなにが問題なのだろうか?
 現在、就職活動の多くが大学3年生の夏休みにインターンシップなどを行い、10月頃から企業説明会がはじまり、年が明けた1月ごろから本格的に採用試験がスタートするというスケジュールになっている。そのため、大学側にとっては、学業に専念してほしい3・4年生が就職活動で不在となり、「3年生の秋以降は学業が成り立たない」という声がうまれている。
 また、日本人留学生が年々減少していることも、就職活動の早期化が要因のひとつとされている。なぜなら、大学3年生が秋から1年間の留学を終えて帰国すると、すでに大手の採用活動は終わっており、就職活動に間に合わないためである。
 さらに、不況による就職難が、就職活動の長期化をもたらしており、4年生の秋になっても進路が決まっておらず学業に専念できない学生も増えている。

「日本貿易会」の提案

 このような就職活動の早期化を懸念し、商社の業界団体である「日本貿易会」が、「学生に勉学に集中させるため、新卒採用活動の時期を従来より4カ月程度遅らせよう」という趣旨の提言を2010年11月17日にまとめたことが関係者に注目されている。
 11月17日の日本経済新聞の記事によると貿易会の槍田松瑩会長(三井物産会長)は11月17日の定例会見で「日本の閉塞感や地位低下」への懸念を口にして、提言をまとめた理由を説明した。
 このように、貿易会は提言を日本経団連に提出、産業界全体に議論を呼び起こしたい考えだが、企業に積極的な賛成は少ないようである。それには、「理系学生は4年生の後半から卒論に取り掛かるのでは遅すぎる」という声や、「志望者の多い企業はそれでも人材を確保できるのかもしれないが、中小企業にとっては優秀な人材の確保が難しい」という声が理由として上がっている。
 いずれにしても、採用時期を遅らせることについては、どこかの企業や業界だけが始めるということは難しく、始めるとしたら企業全体が一丸となって取り組まなければならない問題である。

「就活」の今後は?

 就職活動の早期化が問題となる一方で、学生の側からは「早めに就職活動を始めることで社会を知ることができ、大学での勉強も将来につなげて考えることができる」と、プラスにとらえる意見もある。将来を見据え、学業にそれを結びつけることも、社会に出るための大切な準備となるのではないだろうか。
 また、海外では、卒業後しばらくボランティアや留学などをしてから就職活動をすることも、一般的に広く受け入れられているようである。海外での経験が、仕事をしていく上でのスキルにつながったり、人脈や視野を広げてくれるということも考えられる。日本では現在、大学卒業後は「新卒」と認められないため、大学に残って就職活動をする「就職浪人」という言葉もあるが、政府も「卒業後3年間は新卒と認める」ことについての議論を進めているように、大学卒業後の就職活動についても、今後検討が進んでいくであろう。
 多様な採用活動や就職活動が認められ、学生が本当に自分に合った企業を見つけられるようにするためのルールづくりが、今後は求められているのではないだろうか。

この記事は、『きょういくじん会議』の記事を移転して掲載しているため、文中に『きょういくじん会議』への掲載を前提とした表現が含まれている場合があります。あらかじめご了承ください。
コメントの一覧
2件あります。
    • 1
    • 名無しさん
    • 2010/12/6 14:36:25
    就活の長期化は企業ではなく大学教育の問題です。
    ろくに勉強していない大学生を安易に卒業させるから、企業は成績証明書や学歴があてにならず、独自に時間をかけて審査するしかないのです。
    卒業を厳格にして大学側が学生の質を担保出来れば、選考過程が今より簡素化されるのは間違いないでしょう。現に昔ほどではないといえ、理系の学生がそうですから。
    • 2
    • yutakami
    • 2011/1/5 3:07:13
    初めてお邪魔します。
    ttp://mizunoyutaka.blog.so-net.ne.jp/2006-04-19
    は大学人側からのこの件への意見です。
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