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少年犯罪抑止につながるか―改正少年法施行
kyoikujin
2007/11/1 掲載

 今年5月に可決・成立した、改正少年法が1日施行された。これにより、14歳未満の少年が刑罰法令に触れる行為をした場合でも、警察官は強制的に調査する権限が与えられる。また、これまで少年院へ送致される年齢は「14歳以上おおむね16歳未満」とされてきたが、送致の下限を「おおむね12歳以上」に改めた。

 当初政府から出された改正案では、警察に調査権限を与える範囲について、虞犯(ぐ犯)少年まで含めていたが、調査の対象が広がりすぎることなどを理由に削除された。また、少年院への送致年齢についても、当初「14歳未満の少年の少年院送致」として下限設定はされていなかったが、「おおむね12歳以上」と下限を設定するなど、国会審議を経て児童福祉への過度の警察の介入に一定の歯止めをかけた形となった。

 改正少年法の法案提出理由には

少年非行の現状にかんがみ、これに適切に対処するため

とある。では実際の少年犯罪の現状はどのようになっているのだろうか。

 警察庁がまとめた平成18年度中における少年の補導及び保護の概況(PDF)によると、検挙人員は平成2年の1,078人を底に増加に転じ、平成9年に2,000人を超えてからは高止まりしていたが、平成16年以降減少を続け、18年は前年比18.8%減の1,170人となっている。

凶悪犯少年の検挙人員の推移
平成9年 2,263
平成15年 2,212
平成16年 1,584
平成17年 1,441
平成18年 1,170

 深夜徘徊、喫煙などで補導された不良行為少年は増加傾向にあるものの、刑法犯少年と触法少年(刑法)の数も減少しており、必ずしも凶悪事件を起こしたり、悪質な非行を繰り返すケースが増えているようではないようだ。

 この点について、法務省は

 最近の少年犯罪の特徴として、少年がささいなきっかけで凶悪、冷酷ともいえる犯行に走り、動機が不可解で、少年自身なぜそのような事件を引き起こしたのか十分に説明できない場合があるなど、従来の少年犯罪との質的な違いも指摘されており、少年犯罪は深刻な状況にある。

と説明している。

 一方で、マスコミの報道の仕方や大人の側の反応の変化によって「少年の凶悪化」というイメージが植え付けられているとの指摘もある。

 制度や法律は、その時代の社会情勢によって変わっていくものだが、その変化は正しい現状分析に基づくものでなければならない。少年の健全な育成が目的である少年法の改正であればなおさらだ。今回の改正が少年犯罪の抑制だけでなく、育成・更正にも成果をあげられることを期待したい。

※虞犯(ぐ犯)少年…家出癖・不良交友などの事由があり、将来罪を犯すおそれのある少年。

※触法少年…刑罰法令に触れる行為をした14歳未満の少年。

この記事は、『きょういくじん会議』の記事を移転して掲載しているため、文中に『きょういくじん会議』への掲載を前提とした表現が含まれている場合があります。あらかじめご了承ください。
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