- 「合理的配慮」の実際
- 特別支援教育
今回紹介する事例
今回紹介するのは、言葉の理解の遅れや平仮名の読み書きの難しさ等、学習全般の遅れがあり知的障害特別支援学級に在籍する小学校1年生の児童の交流及び共同学習の実践です。
交流及び共同学習では、個別に事前学習を行ったり、見通しを持たせるような教材の工夫を行ったりしています。また、児童が活躍することができるクラス遊びや係活動、当番活動を積極的に行い、学級への所属感や自己肯定感の向上を図ることで、交流学級の活動に意欲的に関われるようになった事例です。
Bさんについて
Bさんは学習面では、学年相当の平仮名の読み書きができず、自分の名前に出てくる平仮名の認識が難しいです。語彙数は少ないのですが、日常会話に頻繁に出てくる言葉は理解できます。数は、5までの数唱はできますが、数の大小の弁別は困難です。
また、集中時間が短かったり、初めてのことを拒んだりする場面がみられ、自己肯定感が低い傾向があります。
子どもの特性に対応した合理的配慮の実際
1 介助員などを活用した校内支援体制
Bさんが通常の学級での学習に参加する際には、必ず特別支援学級担任か介助員のどちらかが付き添い、学習の支援を行っています。その際には、通常の学級担任、特別支援学級担任及び介護補助員が連携し、共通理解を図りながら支援をしています。
2 教材の工夫
特に、Bさんは平仮名や数字の読み書きの困難や数の認識の困難、言葉の理解の困難があったため、お絵かきボードで平仮名の手本を示したり、種を数える学習では、卵パックを用いて、種を入れていくと数が分かる自作教材を活用したりして、Bさんが自発的に学習できるように支援しています。
3 集中する時間が短いことに対する配慮
通常の学級で授業を行う際には、一つ一つの活動について付き添った特別支援学級や介助員が即時評価したり、褒めたりして、活動への意欲を維持し、高めるように配慮しています。また、落ち着きがなくなるなど、授業への参加が困難になってしまったときには、介護補助員と共に短い休憩をしてから、もう一度学習に戻ることができるように配慮をしています。
4 初めての学習に困難を示すことに対する配慮
通常の学級での学習内容がBさんにとって初めて取り組む内容であり、事前に体験が必要と思われることは、通常の学級の教員が特別支援学級担任に連絡し、特別支援学級担任が個別に事前学習を行うようにしました。また、複雑なルールのやり取りなどがある場合は、ルールを簡略化するなど負担を軽減するようにしています。
5 見通しが持てるような情報提示
Bさんが理解しやすいように、できる限り具体物を準備しました。例えば、植木鉢に球根を植えることについての学習では、植木鉢と球根を用意し、植木鉢の中に球根の図を書いて、何個植えればよいか分かりやすくしています。また、具体物が用意できないときには、手元に完成図や完成に至るまでの手順を書いた図や絵で、できあがりの状態をイメージできるように配慮しています。
まとめ
交流及び共同学習では、学習の場を共にするのだけでなく、その学習の中で児童生徒が何を学ぶのかについて、明確な目標を設定すること、そして、その目標に達するための合理的配慮を行うことが重要になります。この事例では、学習の意欲が持てるようにすることや自己肯定感の向上を図ることを目的としており、そのために、Bさんの実態に応じた学習内容への調整や、見通しを持たせるための工夫、介助員を活用した支援と、それを実現するための特別支援学級担任と通常の学級の教員との連携などが大切です。
参考になりましたでしょうか?
本コーナーでは、インクルーシブ教育システム構築支援データベース(インクルDB)の事例を紹介しています。
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