- 「合理的配慮」の実際
- 特別支援教育
今回紹介する事例
今回紹介するのは、聞こえにくさのある児童の事例です。授業の中で、教科書を読み、先生の説明を聞いたり友達と話し合いをしたりしながら学習をすることは、障害のない児童にはあたりまえのことに思えますが、聞こえにくい児童が教室の中で学習している場合に、教師は、どのように対応したらよいのでしょうか。通常の学級に在籍する聴覚に障害のある児童は、補聴器や人工内耳を活用して授業を受けていますが、全ての音や音声が聞こえている訳ではありません。
Cさんについて
Cさんは、高度難聴のある小学校1年生です。2歳の時から人工内耳を装用していており、文を読んで理解したり、文で表現したりすることは、入学の時にほぼできていました。また、ゆっくりと明瞭な言葉であれば、話し手の口元を見ることで内容を聞き取り、理解することができます。学習意欲が高く、学年相応の学習ができていますが、にぎやかな環境での会話には聞き取りに支障が生じることがあります。
子どもの特性に対応した合理的配慮の実際
1 座席の位置と、雑音の軽減
Cさんの座席を窓際の2列目に置くことで、学級全体のほかの児童の様子や学級担任がよく見えるようにしています。また、机・椅子の脚の雑音の軽減対策として、使用済みのテニスボールを利用しています。この配慮は、Cさんの教室はもちろんのこと、学校の全教室でも実施しています。
2 カード、デジタル教科書、実物投影機などの視覚情報の充実
Cさんの聞こえにくさに応じて、教師は学習の見通しをフラッシュカードで示したり、授業で繰り返し使う指示カードや意思カードを準備したりして、視覚的な教材を用いて情報提供を行っています。デジタル教科書を活用した学習は、拡大画面で読んでいるところや教師の説明などを視覚的に確認でき、視覚情報を頼りにする児童には有効です。国語では、教科書の本文を画面に提示し、重要な言葉に線を引いて確認したり、算数では、教科書の挿絵や図表を画面に提示し、実際に移動して見せたりする等の活用をしています。また、実物投影機(書画カメラ)を活用し、Cさんが記録したノートの記述の実物を画面に大きく映すような学習活動にも有効です。
3 FM補聴システムの活用
Cさんは、学校生活全体の中でFM補聴システムを活用しています。FM補聴システムは、教員の声をFMマイクで拾い、FM電波で直接に児童が装用している聴覚補償機器に音声が伝えられるシステムのことです。在籍学級では、学級担任がFMマイクを装着しています。また、他の児童の発言が聞き取りやすくなるように、FMマイクを付けた学級担任が、発言する児童のそばに立ち、発言する児童の音声がFMマイクを通して、難聴のCさんに届くようにしています。学校集会や朝会などでも、話し手がFMマイクを付けるようにしてます。
まとめ
聞こえにくさのあるCさんに対しては、特別支援学校(聴覚障害)や通級指導教室(聴覚障害)と連携をとりながら合理的配慮の検討が行われました。その結果、教室の音環境への配慮、視覚教材の有効活用、FM補聴システムの活用などが行われるようになりました。
また学校で「授業のユニバーサルデザイン化」を目指した職員研修に取り組むなかで、聞こえに障害がある児童にとって有効な配慮は、他の多くの児童にとっても分かりやすい授業の手立てになることが共通理解されるようになりました。
参考になりましたでしょうか?
本コーナーでは、インクルーシブ教育システム構築支援データベース(インクルDB)の事例を紹介しています。
もっと詳しく知りたい先生は、さらに詳しい情報をファイル名のH25 0100PT1-HIで検索する事でダウンロードできます。→実践事例データベース
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