- 「合理的配慮」の実際
- 特別支援教育
今回紹介する事例
この事例は、弱視特別支援学級に在籍する小学校2年生のFさんが、見えにくさからの学習上又は生活上の困難を改善・克服する配慮を受けながら通常の学級との交流及び共同学習を行っている事例です。
Fさんについて
視力は右目が矯正視力で0.3、 左目の視力は0です。板書であれば、大きめの文字(140 ポイント程度)、紙にプリントしてある文字であれば、目を近づけて8ポイントまで見ることができます。遠くのものを見る際には、単眼鏡を使用しています。
本を読むことが好きで、学習に対して意欲的に取り組み、成績も良好です。一方で、見えにくさによる困難のため、生活上の体験や経験が少ない状況にあります。
小学校では、国語、算数、自立活動を特別支援学級で学習し、その他の教科を通常の学級で学んでいます。交流及び共同学習の際には、特別支援学級の担任が支援に入っています。
子どもの特性に対応した合理的配慮の実際
1 見えにくさによる困難を軽減するための工夫
- 掲示物の文字が読みやすいように、白黒反転文字で拡大したものを掲示するようにしています。また、普通の画びょうでは文字と間違える可能性があるので、透明なものを使うようにしました。
- 掃除の時間には、ゴミを集める場所をテープで囲んでおいたり、水道を使用するときに並ぶ場所をテープを貼って示したりするなど、見やすくするようにしました。
- ノートを見るときに、姿勢の保持が厳しくなるので、正しい姿勢で書けるよう、傾斜のついている机を使用しています。
- 通常の学級で学習する際には、黒板の文字が見えやすいように、真ん中の列の一番前の席に座るようにしています。
2 学習での工夫
- 体育でのキックベース等のボールを使った運動の際は、安全に配慮して柔らかいボールを使用したり、ベースの場所が分かりやすくなるようにコーンを置いたりしています。
- 算数の「長さ」「水のかさ」の学習を行うときには、mmやmlの目盛りを見ることが難しかったので、デジタルカメラで撮影した画像を拡大して目盛りの読み取りを行いました。
- 図画工作でカッターナイフやハサミなどの道具を使用する必要があるときは、事前に特別支援学級で練習をするとともに、図画工作の時間に特別支援学級の担任が横につき、安全に作品を制作できるように支援しました。
3 視覚的情報の保障
- 板書する際には、内容を理解しやすいように、教員が必要に応じて板書事項を読みあげました。
- 通常の学級で学習するときには、特別支援学級の担任が横につき、交流学級の担任の説明や板書だけでは理解しにくいところを補足説明しました。
- 印刷物を使用する際は、Fさんの見えやすい大きさに拡大した印刷物を渡すようにしました。
- 遠くにある物が見えにくいため、提示する教材については、Fさんの手元にも具体物を用意して近くで見ることができるようにするか、写真を撮って手元で見られるようにしました。
4 移動のための支援
Fさんが学校の施設や設備に慣れるため、小学校1年生のときには学校の中を担任と一緒に歩き、段差があるところなどを確認するようにしました。
まとめ
見えにくさのある子どもの支援には、見えにくさによる困難を直接軽減するだけでなく、視覚的な情報が得にくい状況に対して、どのような保障を行うかが重要になります。
この事例では、Fさんが見やすくなるような工夫をするとともに、板書されている内容を読みあげたり、付き添っている特別支援学級担任が補足説明したりするなど、第三者からの直接的な支援を並行して行っています。また、見えにくさのある子どもは空間情報を得にくいため、慣れない場所の移動は困難です。この事例では、小学校1年生時に、担任がFさんと一緒に、学校の中を歩き、施設の配置や段差の位置を確認しています。
このような支援によって、Fさんは、交流及び共同学習の中で、同級生と同じように学習ができたようです。
参考になりましたでしょうか?
本コーナーでは、インクルーシブ教育システム構築支援データベース(インクルDB)の事例を紹介しています。
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