- 「合理的配慮」の実際
- 特別支援教育
今回紹介する事例
Gさんは小学校3年生で肢体不自由のある児童です。Gさんに対して、通常の学級の中で、歩行や移動、動作の困難を軽減したり、肢体不自由による困難さから生じる「できないこと」「難しいこと」に対する心理面への支援をしたり、他の児童と同じ学習活動に参加できるようにした合理的配慮の事例です。
Gさんについて
通常の学級に在籍するGさんは、脳性まひのため、歩行や立位が不安定で、両脚に補装具をつけています。また、姿勢が安定しにくく、指先を細かく動かすことが苦手です。
Gさんは、明朗で話し好きで、友人関係は良好です。また、大人に対しても、笑顔で物怖じせずに話し掛け、積極的に関わりを持とうとします。さらに、他の児童と一緒に学習し、他の児童と同じ学習計画のもとで学んでいます。
しかし、体育や音楽、図画工作等の授業では、実技や作業が伴うために、他の児童と同じ活動をすることが困難な場合もあります。
また、Gさんは、書字の苦手意識が強く、ノートをとることを嫌がったり、宿題の量を過重に感じたりすることもあります。
子どもの特性に対応した合理的配慮の実際
1 歩行や移動、動作の困難さを軽減するための工夫
- Gさんの座席の位置は、席の立ちやすさや移動の負担が少ないことを考慮して決めています。
- Gさんの歩行等の移動支援とその度合いについては、そのときのGさんの歩行の状態に応じて検討しています。その際、保護者の協力を得ています。
- Gさんの登下校の際には、校舎入り口や階段での混雑を避けるため、教職員用の玄関を利用しています。
2 学習面での工夫
- 算数では、習熟度別指導を受けており、Gさんが計算や作図等の作業に時間がかかることや教室移動の負担があること考慮して、Gさんの学ぶ学習グループと学習場所を決めています。
- 図画工作の授業では、Gさんは制作活動に時間がかかることがありますが、他の児童と同じ教材を使用しています。制作活動に時間がかかる場合には、Gさんの課題の量を調整したり、時間を延長したりする配慮を行い、Gさんが作品を完成できるようにしています。
- 体育の授業では、ハードル走を行うときは、Gさんも授業に参加できるように、走るのではなく、歩行で参加できるようにし、ハードルに代えてペットボトルを置き、跳ぶのではなく、またげるようにしました。このように、体育ではGさんの目標設定や学習内容を変更して対応しています。
- 音楽のリコーダー演奏では、Gさんの右小指の動きの調整が難しいため、指の動きが難しい場合にも、使いやすいよう配慮されたリコーダー(改造リコーダー)を使用しています。また、演奏の際には、Gさんが安定した姿勢で指の動きに意識が集中できるよう、Gさんに座って演奏するか、立って演奏するかを選んでもらうようにしています。
3 心理面での工夫
- 書字を伴う宿題については、書字の苦手意識が強いGさんの学習意欲が失われないよう、あらかじめGさん自身が可能な宿題の量を決めています。
- Gさんの移動や動作の困難さを軽減するための工夫を行うとともに、Gさんの自己肯定感を高め、学級への所属意識をもって学習活動に参加できるようにしています。
まとめ
肢体不自由のある子どもに対しては、歩行や移動、動作の困難さを軽減するための直接的な支援だけでなく、肢体不自由による困難さから生じる「できないこと」「難しいこと」に対する心理面への支援についても考える必要があります。
この事例では、Gさんの歩行や移動、動作の困難さを軽減するための支援とともに、授業の中で、Gさんが他の児童と一緒に学べるように、課題の量を調整したり、時間を延長したり、学習内容の一部を替えるなどの工夫を行っています。また、書字への苦手意識に対する配慮として、宿題についてはあらかじめGさん自身が可能な宿題の量を決めて、宿題に取り組めるようにしています。
このような支援によって、Gさんは、通常の学級の中で他の児童と一緒に学習ができたようです。
参考になりましたでしょうか?
本コーナーでは、インクルーシブ教育システム構築支援データベース(インクルDB)の事例を紹介しています。
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