校内研究のファシリテーター/伴走者として
この8月に『ごく普通の公立小学校が、校内研究の常識を変えてみた』が発売されました。もう読んでいただけたでしょうか?
私はこの校内研究に、現場の公立小学校教員の時から微力ながら伴走させていただきました。
私が蕨市立北小学校に伺ったのは3年間の研究の中のちょうど真ん中、2年目の夏。目指しているところが少しわからなくなり、何をめざして研究しているか分からなくなってきた時期だったと思います。
このタイミングで私がさせていただいたことは3つ。
- 「なんのために研究をしているのか」について全員で話し合い、思っていることを出し合っていただく場づくり
- 蕨北小学校の研究は最先端の素晴らしいことをしているのだという客観的評価
- これからの研究の見通し
です。
たぶん私がやっていることは、著者の葛原先生や花岡先生もされてきたことと思います。
しかし、ここで大事なことは、学校内の人間だけでは、うまくいきづらいということ。
学校には、様々な考えの先生がいます。改革派の先生もいれば、慎重派の先生もいます。
どちらの考えも正しい中、教職員みんなで一つの方向を見るのはとても難しいことです。
そこで、研究主任の先生は、自分の考えを代弁してくれるような講師の先生を連れてくることが大事です。今回は私を選んでいただきました。
外部の講師による方向づけをすることで、「葛原先生や花岡先生が言っていることは、うちだけじゃなかったんだ」「こういう研究の形でいいんだ」とすることができます。
今読んでくださっている方は、うちの講師の先生は誰が呼んできているのか?私が呼びたい研究講師の先生は誰がいるのか?まずなんのしばりもなく考えてみることが大切です。
校内研究で目指す姿を明確にもつ
蕨北小学校の2年目の夏の研修で、私は初めて伺わせていただきました。
とにかく事前にオンラインで何度もヒアリングさせていただき、研修が終わった後のゴールがどうなればいいのか話し合いました。
後は、葛原先生や花岡先生が話してほしいように私(外部講師)が話すだけ。
最初は「なんのために研究をしているのですか?」と問いかけ、「どんな研究だったら幸せなのか?」ということについて話していきました。
この問いには予想される答えがありました。
「楽しい」「つらくない」などの答えがでてくることです。
ここで終わってしまうと、「楽しい研究をしたいから頑張り過ぎたくない」「楽しい研究ってそもそもなんなんだっけ?」とぼけてしまいます。
私はこの際「楽しい研究ってどんな研究ですか?」と問い返して考えていただきました。
「持続可能」など様々な言葉がでてきたのですが、この言葉も一言でまとめず根気強く言語化しました。
だからこそ、この後の研究では、「こういうところはがんばるけれども、ここについては頑張らない」という全体の方針を定めることができました。
この年の最後の校内での発表は、全員がグループ研究をまとめ発表する学びもありつつ楽しい校内研究をして終えることができました。
公立小学校の難しさと、「北フェス」の開催
無事よい方向に向かったと思ったのですが、大変だったのはこの後です。
公立学校では毎年多くの先生の入れ替わりがあります。
もちろん蕨北小も例外ではありません。
研究発表の3年目、新しく入った先生方から、様々な疑問が生まれていました。
初めてやる校内研究の形。やったこともないのに、研究発表が控えている。
一部の先生がやればいい研究ではなく、全員で作っていく研究。だけれども私は来たばかりだから分からない。確かにそうなります。
この年の最初の校内研究では、「今の研究を見て思うこと」を遠慮なく書いてもらいました。
疑問を付箋で書いてもらいながら、今までいた先生方がその良さについて話していく。
私も、今年来た先生だったら思うだろう悩みをたくさん花岡先生、小林先生にみんなの前でぶつけていきました。
研究主任の葛原先生が異動されただけでも大変だったことと思いますが、その中で今年度の研究発表をしなくてはいけない。
その日の校長室でお二人が頭を抱えていたことを、昨日のことのように思い出します。
その後、蕨北小は研究発表の当たり前を疑い、なんのために校内研究をするのかという本題に戻りながら、「北フェス」という形にまとまっていきました。
そのあたりは、本を読んでいただければと思います。
その研究発表は素晴らしく、様々な記事になっております。ぜひ「蕨北小学校 研究発表」で調べていただければと思います。
よりよい校内研究への挑戦
多くの先生方が、よりよい校内研究にしたいと悩まれていることと思います。
時代は大きく変わってきています。一人一台端末が入り、授業の形も大きく変化している中、校内研究の形も変わっていってよいに決まっています。
私たちの中にある「校内研究」はこんな形というものを疑い、うちの先生方全員の指導スキルがあがるためには何ができるのかと考えて、よりよい形の校内研究をしてほしいと思います。
今までと違う研究に挑戦したいという方は、この本がその一助になることと思います。