教育オピニオン
日本の教育界にあらゆる角度から斬り込む!様々な立場の執筆者による読み応えのある記事をお届けします。
学級開きまでに知っておきたい!ほめすぎでも叱らないでもない「ポジティブチェック」の重要性
大阪府公立小学校溝口 健介
2025/3/1 掲載

 新年度の学級開きは、子どもたちにとっても教師にとっても大切なスタートの時期です。最初の関わり方が、その後の学級経営に大きな影響を与えます。だからこそ、ほめすぎることなく(※)、また適切なフィードバックを与える「ポジティブチェック」という習慣を身につけることが重要です。本記事では、学級開きに向けて、この考え方をどのように実践していくかについて紹介します。

※ここで言う「ほめすぎる」とは、行動の過程を見ずに結果だけを見てほめるといった、「おだてる」に近いものを指します。

「ポジティブチェック」とは?


 ポジティブチェックとは、子どもたちの行動や成長の過程に注目し、それを適切な言葉で伝えることです。単に結果をほめるのではなく、「どの行動に感心したのか」「その行動の価値とは何なのか」を具体的に伝えることが重要になります。
 例えば、「時間を守れてえらいね」ではなく、「〇〇さんが時間を意識して準備していたおかげで、みんながスムーズに活動を始められたね」というように、行動の意味や価値を伝えることで、子ども自身が自分の成長や努力を実感しやすくなります。

学級開きにおけるポジティブチェックの実践


 新年度の始まりには、多くの教師が子どもたちのよさを見つけ、ほめることに力を入れます。しかし、時間が経つにつれて注意や指摘の言葉が増え、ほめることを忘れてしまうことがあります。そうならないために、学級開きから意識的にポジティブチェックを実践し、継続することが大切です。

1 最初の一週間で「見取る」習慣をつくる

  • 子どもたちの小さな成長や努力に気づくために、観察する時間を意識的に確保する。
  • 学級通信や日記などに、子どもたちのよい行動を記録しておく。

2 「客観的な事実+主観的な価値付け」を意識する

  • 事実を明確にし、その行動がクラスにどのような影響を与えたのかを伝える。
  • 例えば、「ノートをきれいに書けたね」ではなく、「ノートが整理されていて、後から見返したときに理解しやすくなるね」と伝える。

3 継続するための仕組みをつくる

  • 教師自身が子どもたちのよい行動を見逃さないように、毎日意識的に記録する。
  • 定期的に見返し、フィードバックの頻度を維持する。

叱るべき場面ではどうするか


 ポジティブチェックを意識することは、「叱らない」ということではありません。学級のルールやマナーを守るためには、必要な場面で適切な指導を行うことも大切です。そのために私が大切にしているポイントが、以下の2つです。

1 「流す」と「見逃す」の違いを理解する

  • 些細なことをすべて指摘するのではなく、重要な場面ではきちんと指導する。
  • 例えば、ルール違反を見逃さず、「もしみんなが同じことをしたらどうなるか?」と問いかけることで、子どもたちに考えさせる。

2 基準をブレさせない

  • 事4月の時点で大切にしたことを、年度を通して一貫して伝え続ける。
  • 叱る際も、「なぜそれがいけないのか」を丁寧に説明し、子どもたちが納得できる形で伝える。

まとめ


 学級開きから意識的にポジティブチェックを行い、継続することで、子どもたちの成長を支え、学級経営を安定させることができます。また、叱るべき場面では適切に対応し、クラス全体の信頼関係を築くことが重要です。
 安心して学級開きを迎え、これからの学級のあたたかい空気をつくるために、「ほめすぎでも叱らないでもない」適切な言葉かけを実践していきましょう。

溝口 健介みぞぐち けんすけ

兵庫県出身。大阪府堺市で小学校教諭として勤務。現在14年目で、学級担任を11年と生徒指導主事を3年経験。好きな教科は、社会科と道徳。モットーは、「ほめて、認めて、励ます」。
主な著書に『1年目の先生が身につけたい 学級づくり ポジティブチェックの習慣』(明治図書)がある。他、『授業力&学級経営力』2024年3月号・2024年9月号・2025年3月号』原稿執筆。『小3担任のための学級経営大事典』『小4担任のための学級経営大事典』(2024)分担執筆(いずれも明治図書)。
Instagramでは、トトロ先生(totoro.sensei)のアカウントで学級経営や授業づくりについて発信している。

コメントを投稿する

※コメント内ではHTMLのタグ等は使用できません。