- 学級づくりにいかす!体育授業
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水泳が大の苦手というA君。1回目の授業では、何とかプールに入ったものの、「寒い」といってすぐに上がってしまいました。次の時間からは、何かしらの理由をつけて連続で見学。どんなに励ましたり説得したりしても、「無理」の一点張りで、ついには「水着を忘れました」作戦に。結局、全く泳ぐことのないまま水泳の指導期間が終了してしまいました。
授業でのこんな失敗ありませんか?
今回は、水が苦手な子どもへの水泳指導のポイントをテーマにとりあげました。
ポイント1想像以上の水への恐怖心を理解する
水泳を嫌がる子どもにとって、その原因の最たるものは、水への恐怖心です。
水は、場合によっては溺れて命の危険にさらされるという、他にはない特殊な恐さがあります。
水が怖い→水に触れただけ(または近付くだけ)で息が苦しい→泳げない→やらない→ずっと泳げない&怖いまま
という悪循環のスパイラルにはまります。
例えば「幅1mのラインの上を10m自転車で進んでください」と言われたとします。自転車に乗れる人にとっては、何の苦労もいらない、超簡単なことです。
しかしこのラインが「切り立った崖の上の道」だとしたらどうでしょう。
全く同じ動作なのに、途端に難しくなりませんか。
水が本当に苦手な子どもにとって、水中で息を止めるとか、息継ぎをするというのはそういう感覚です。命の危険を感じる行為です。
指導者の側が、この感覚を理解し、共感を示してあげることが指導の第一歩です。
ポイント2「顔を水につける」と「泳ぐ」を区別して指導する
そう考えると「顔を水につける」という行為は、水が本当に怖い子どもにとって、かなりレベルの高いことになります。途中に顔を水につける動作の入る「息継ぎ」も同様です。
息つぎがうまくできない子は大抵、息継ぎを意識しすぎて息を吸いすぎています。「息を吸わない」=「苦しい」と短絡的に考えてしまうためです。実際は、息を吸いすぎて苦しいのですが。
そこで、「息を水中で吐く」ことを指導します。
具体的には、まず地上で「息を吸って、吸って、吸って、吸って!」と子どもたちに指示します。すると、「苦しい!」と口々に言います。
次に、「息を、吐いて、吐いて、吐いて、吐いて…」とやらせます。こちらは、余裕です。
つまり、
息は吐く方に時間がかかり、吸うのは一瞬。苦しいのは吸いすぎ。
ということを体感させます。
では、いつ吐くかというと、水中です。ここまで理解させて、水中で息を吐いて水面上で息を一瞬吸う「連続ボビング」を教師と一緒にやります。
足がプールの底につく安全・安心の状態で、呼吸の練習をするのがポイントです。
ポイント3仲間と一緒に「楽しい!」を体感させる
私の勤務校である千葉大附属小には、大きなウレタンボードが数枚あります。子どもが3〜5人並んでつかまれます。
見ただけで、触って、乗って、泳いでみたくなりませんか?
水が恐い子どもにとっては、こういうワクワクさせる用具があることも大切です。
このボードの使い方は様々ですが、ビート板の代わりとしても重宝します。
集団で一辺につかまり、バタ足で押します。しがみついて顔をあげたままでもいいのですが、「顔をつけて腕を伸ばして、バタ足をすると速く進むよ!」と声をかけることで、そうする子どもが出ます。
仲間がやると、「ちょっと顔をつけてみようかな」とやってみる子どもが出ます。
また、当たり前ですが、みんなでバチャバチャやっているので、結構な量の水が顔にかかります。自然、遊びながら水に慣れてきます。プールの中央だって、みんなとボードにつかまっていれば怖くありません。
大きなウレタンボードは、とても目立ちます。
見学の子どももやりたがります。そして……そう、例のあの子も興味を示すかもしれないのです。(ついでに、既に十分泳げるグループの子どもたちもやりたがります。どさくさに紛れて、いつの間にか混じっていたりします。)
仲間と一緒であること。楽しそうだ、自分にもやれそうだと思わせること。すべての授業のスタートは、ここから始まります。
今月の格言
水泳は「嫌いだったのに、いつの間にか好きになってた」と思わせるしかけを!