「単元を貫く言語活動」ここが知りたいQ&A
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「単元を貫く言語活動」Q&A(20)
子どもたちが習得と活用を意識する授業の工夫(壁面掲示・単元構成)
大阪市立丸山小学校教頭山下 敦子
2015/11/20 掲載

国語を教えていて前の単元で学習したことが生かされていないなあと思うことがあります。以前の学習内容を思い出したり、学習したことを生かしたりするためにどのような工夫をしたらいいでしょうか。

算数の学習では、平行四辺形の面積を求めるのに、「長方形の面積の求め方を習ったから、それを生かして…」と考えていくことがあります。国語科では、「『ごんぎつね』で学習したことを生かして…」とは、なかなかなりません。だからこそ、指導者が意識的に「前単元でつけた力を分析して、本単元で活用すること」が求められます。
 子どもたちに今までの学習内容を常に意識させたり、気付くようにしたりする工夫が求められます。一つには、「学習したことを掲示する」ことが効果的です。これは、「学習用語」が中心になると思いますが、説明文の構成、様子を表す言葉の種類、筆者・作者の表現の工夫など、今までに学習した事柄を、コンパクトにまとめて背面黒板や壁面に掲示しておきます。そうすることで、子どもは常に意識するようになります。「国語のお道具箱」「国語の力」というようなタイトルで掲示している先生もあります。

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授業のどのような場面で、前に学習したことを振り返ればいいでしょうか。

単元を貫く言語活動では、第1次に「単元のゴール」についての見通しをもたせます。それとともに、これまでの学習を振り返りながら、本単元の学習をどのように進めていけばよいか考えていきます。
 たとえば「作品の魅力を伝える読書座談会をしよう」では、単元の導入時に「作品の良いところ、魅力を伝えるには、どのようなところに着目すればいいでしょう」と問いかけます。作者の表現のうまさ、ストーリーの面白さ、登場人物の性格や心情など、今までに学習したことを想起させていきます。その際に、「国語のお道具箱から使えるものはないかな」という言葉かけが有効になってきます。

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そうすると、単元を構成するときにも、身に付いた力を生かすということを考慮する必要がありますね。

そうですね。
 「単元を貫く言語活動」とは、単元の中で習得と活用を効果的に行い、付けたい力を定着させていくものです。たとえば「作品の魅力を伝える読書座談会をしよう」という単元では、読書座談会という言語活動を通して、表現のうまさや登場人物の心情等について読み取る力を付けます。引き続き並行読書を行う場合でも、教科書教材で身に付けた力と言語活動(この単元では読書座談会)を活用すれば円滑に学習活動を行うことができ、付けたい力を定着させていくことにつながります。つまり、第二次の授業において、教科書教材で学んだ(習得した)読みの力を、自分の選んだ本の読みに生かす学習活動として位置づけられます。
 また、いつも新しい言語活動を位置づける必要はありません。今までに子どもたちが経験している言語活動を精査し、付けたい力にふさわしい言語活動を位置づければよいのです。言語活動を行うことが目的になってしまっては、付けたい力を付けることはできません。あくまでも「言語活動を通して学ぶ」ことが大切です。
 そして、単元の最終には、単元の学習を振り返り「付けたい力」が付いたのかどうか、自己評価することも大切です。それが子どもたちの自信にもつながり、次の単元では、「身に付いた力」として活用できるようになります。

ここをチェック!授業改善のためのポイント

学習したことを効果的に生かすために、次のポイントに留意しましょう。

  1. 本単元に入る前に、今までに学習した内容について把握していますか?
  2. 本単元で付けたい力に迫る(または、その基礎となる)既習事項について振り返る時間や手立て、場面を設定していますか?
  3. 本単元の終わりに、「どのような力が身に付いたのか」を振り返り、自己評価する時間を設定していますか?
山下敦子やました あつこAtsuko Yamashita

 大阪府大阪市立丸山小学校教頭。『国語教育』2016年1月号「特集 主体的・協働的に学ぶ力を育てるグループ学習」などへの記事投稿がある。

(構成:木山)

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