「単元を貫く言語活動」ここが知りたいQ&A
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水戸部先生に聞く!「単元を貫く言語活動」Q&A(18)
情報活用能力を育てる国語科での調べ学習指導
文部科学省教科調査官水戸部 修治
2015/9/17 掲載

社会科や総合的な学習の時間では、調べ学習を取り入れることが多くなりました。でも、調べ学習ではなかなか資料が読めない子供がいます。国語科では、説明文の指導と関係が深いと思うのですが、指導をどう工夫したらよいでしょう。

国語科で身に付けた読む能力が、各教科等での調べ学習にも生きるものとなることは、とても大切なことですね。まず、調べ学習に必要な読む能力を挙げてみましょう。例えば、次のようなことが必要になるのではないでしょうか。

  • 何を調べたいのかをはっきりさせること。
  • 調べるために必要な文献等を見付けること。
  • 目次や索引を活用して、必要な情報がどのページに掲載されているのかを特定すること。
  • 見出しやリード文などに着目して、どの文章や囲み記事などを読めばよいのか見当を付けること。
  • 調べたい事柄に関わる内容を理解して、分かったことと分からないこととをはっきりさせること。
  • 調べた結果として報告したり説明したりしたい内容を引用したり要約したりすること。
  • 調べたことについて感じたことや考えたことをはっきりさせること。

 調べ学習を進めるためには、様々な読みの能力を総動員する必要があることが分かりますね。

一度に全部指導するのは難しそうです!! 何から指導すればいいのでしょうか。

もちろん、一つの単元で全てを指導するわけではありません。実際には次のようなことが重要になります。

  • 年間指導計画を見通して、どの単元でどのような指導を行うかをはっきりさせる。
  • 学年の発達の段階に応じて、各学年で系統的に指導する。
  • 社会科や特別活動、総合的な学習の時間等との連携を考慮する。

 当面、次の説明文単元でどこに重点を置いて指導するかを決めてみましょう。

分かりました! まず何を調べたいのかをはっきりさせて調べられるようにしてみます! でも、説明文を読む学習では、どのように指導すればいいのですか。

説明文では、何について、どのように説明されているかを読むことが大切にされてきました。もちろんこのような読みが重要であることには変わりはありません。しかし、あるテーマについて限られた分量で全てを詳細に説明することはとても難しいでしょう。ですから、あることについては詳しく説明されていても、他のことについては説明が省略されていることも少なくありません。
 そこで文章を読んで、「何が分かったか」だけではなく、「まだ分からないことは何か」「もっと知りたいことは何か」をはっきりさせてみましょう。
 また、手にした文献に必ず求める情報が掲載されているとは限りません。調べたい事柄に関する情報が見付からない場合は、

  • 他の図鑑や事典に当たってみる。
  • 友達や先生に聞く。
  • 調べる言葉を別の言葉に代えて調べてみる。

といった手立てをとれるようにしてみましょう。
 情報化社会を生きる子供たちにとって、調べ学習にも生きる読む能力を育成することはとても重要なことです。早速チャレンジしてみましょう!

ここをチェック!授業改善のためのポイント

単元を貫く言語活動を位置付けた授業づくりに向けて、調べ学習にも生きる読む能力を育てるには、次のポイントに留意しましょう。

  1. 調べ学習に必要な読む能力を明らかにし、単元の指導のねらいを重点化して指導していますか。
  2. 教材文の内容を読むことにとどまらず、図鑑や事典を活用できるようにする指導の手立てを工夫していますか。
  3. 調べたい事柄に関する情報が見付からない場合に、どんな次の一手を打つかを子供たちが考えられるよう指導を工夫していますか。

水戸部 修治みとべ しゅうじShuji Mitobe

 文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官、国立教育政策研究所教育課程研究センター総括研究官・教育課程調査官・学力調査官。小学校教諭、県教育庁指導主事、山形大学地域教育文化学部准教授等を経て、平成20年10月より現職。
 『「単元を貫く言語活動」を位置付けた小学校国語科学習指導案パーフェクトガイド 1・2年/3・4年/5・6年(全3冊)』『単元を貫く言語活動のすべてが分かる!小学校国語科授業&評価パーフェクトガイド』『「単元を貫く言語活動」授業づくり徹底解説&実践事例24』『小学校国語科 言語活動パーフェクトガイド 1・2年/3・4年/5・6年(全3冊)』など、著書多数。

(構成:木山)

コメントの一覧
1件あります。
    • 1
    • たなか
    • 2015/9/21 10:36:51
    単に「調べる」という行為にも、実は「多様な読む能力」が必要とされるという水戸部先生のお話は目から鱗です。確かに同じ文献や資料が手元にあっても、A君は所定の目的を達成できて、B君はできないという状況は当たり前にあります。しかしその原因が、その背後にある「目には見えない」多様な能力のひとつひとつに関係しているとしたら…うーむ、納得。これまでは「A君は賢いから」とか、「B君は調べ学習が苦手で慣れていないから」とかそういう漠然とした理由で片付けていたような…。
    水戸部先生のご指導はいつも元気が出ます。どうすれば良いのか、工夫する道筋が見えるからです。それでいて教師の実践の自由度をちゃんと確保してくださる配慮が私には感じられます。
    1回1回の国語の説明文の授業が、どれだけ子ども達の血や肉になっているかを考えながら、今日も単元構想を自分の頭を使って練るしかないっ!!
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