ほめ言葉で子ども&クラスが成長する!菊池道場の価値語録
子どもの笑顔がみるみるあふれる! プラスに考える学級づくりの羅針盤
ほめ言葉で子ども&クラスが成長する!菊池道場の価値語録(2)
「頑張った痕跡」を見つけてほめる!子どものストーリーを想像して価値付ける価値語録
菊池省三監修菊池道場広島支部
2016/7/10 掲載

子どもをほめようとするときに、どのような視点を持って子どもを見つめているでしょうか。「子どもらしさ」「思いやり」「努力」など、多くの視点が考えられます。視点を豊富に持ち、可能な限りたくさんほめてあげたいものですが、子どもをほめられる場面に毎回立ち会えるとは限りません。「あ、しまった! これは何かほめてあげられそうだったのだけど…」というとき、子どもやその周囲の様子に目をじっと向けることで、「努力の痕跡」を見つけられることがあります。今回は、「努力の痕跡」についての価値語録です。

「拭く」ではなく、「磨く」

雑巾がけは、床を磨きあげるつもりで行いましょう。きれいになった床を見ると、達成感を感じ、努力することが楽しくなります。

 この価値語が誕生した場面は、掃除時間でした。掃除場所の見回りを済ませて教室に戻ってくると、教室や廊下の床が太陽の光を反射するくらいピカピカになっていました。見回りに出る前に雑巾がけの仕方を教えていたのですが、その教えを忠実に守って掃除をしたのだろうな、と感じました。
 次の日、雑巾がけの様子を見てみると、掌に力を込めた素晴らしい雑巾がけをしていました。その姿は、床を「拭いて」いるというより、「磨いて」いるといった方が近いものでした。また、雑巾がけそのものを楽しんでいるとも感じました。多くの子ども達が敬遠しがちな雑巾がけを楽しむ子どもには、ひとつの努力したストーリーがありました。一人一人の子どもが持つストーリーを想像し、価値付けてあげられる教師であり続けたいです。

ひざを汚す

掃除時間後にひざを汚している人がいますが、それはひざを床について、一生懸命床を磨いたサインです。一生懸命さが、ひざの汚れに表れます。

 こちらも、雑巾がけの場面で誕生した価値語です。掃除時間終了後に、長ズボンのひざを真っ白にして教室に戻ってきた男の子がいました。彼は、ひざを床について汚れをゴシゴシとこすっていました。掌だけでなく、指先も使って頑固な汚れ(折れた鉛筆の芯が床につけた跡)をとろうとしていたのです。彼の姿を学級全体に紹介することで、雑巾がけに進んで取り組む子どもが増えました。
 掃除はスポーツです。努力すればするほど、成果が表れます。教師の役割は、努力の成果を実感させてあげることです。そのためのひとつの手段が「努力の痕跡」を見つけることであると考えます。

イラスト

「きれい」は難しいけど,「ていねい」なら誰でもできる

全員がお手本のような文字を書くことは難しいです。しかし、丁寧な文字は全員が書けます。自分の本気度を文字に表しましょう。

 漢字ノートは、過去の漢字練習をすぐに振り返ることができるので、子どもの変容を感じるにはとても便利です。漢字ノートの丸付けをする際には、字形の整っている子どもをほめることはもちろん、丁寧に書くことを意識して漢字練習をしている子どももほめてあげたいものです。
 丁寧に書いたことを示すサインは、「濃い字」を書いていることです。家で漢字練習をする場面を直接見ることはできませんが、字の濃さからは、子どもの努力を感じることができます。ある男の子は、マスからはみ出していたものの、前日より濃い文字を書いてきていました。そこで、「昨日よりも字がこくなっていますね!ナイス努力!」とコメントを書きました。すると、次の日にはマスに入れた文字を書いてきていました。コメントを読んだ瞬間の彼の表情を見ることはできませんでしたが、きっと笑顔になり、やる気を持って漢字練習をしてくれたのだと思います。
 子どもの見えないところでの努力を敏感に察知する力が大切です。

菊池 省三きくち しょうぞう

愛媛県出身。山口大学教育学部卒業。 小学校教師として「ほめ言葉のシャワー」など現代の学校現場に即した独自の実践によりコミュニケーション力あふれる教育をめざしてきた。 教員同士の学びの場「菊池道場」を主宰し、その支部は全国40ヵ所に広がっている。「プロフェッショナル 仕事の流儀」で取り上げられたことをきっかけに全国へ講演。 「世界一受けたい授業」では、学級崩壊立て直し人として紹介される。2015年3月に小学校教師を退職。自身の教育実践をより広く伝えるため、執筆・講演を行っている。『ほめ言葉手帳』には価値語録とともに、子どもをほめる手立てが満載!

菊池道場広島支部きくちどうじょうひろしましぶ

(構成:林)

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