- 自治でつくる学級づくり
- 学級経営
学級崩壊は沈静化してはいない
数値としての学力に関心が向けられる中で、学級崩壊などの集団づくりの問題が注目されることは以前ほど多くはなくなりました。しかし、学級崩壊が沈静化したわけではないでしょう。それは、日常化した、つまり、ニュースバリューを失ったからだと見ています。学級が機能不全に陥る状況は厳然としてあります。
それでは、今、学級集団づくりにはどのような問題が見られるのでしょうか。
学級集団づくりに見られる4つの問題
1 強まる管理傾向
子どもたちの規範意識が何かと取り沙汰される昨今、意外だと思われるかもしれませんが、これは、かつて校内暴力を治めたような強い圧力によるものではありません。しかし、着実に子どもたちの生活や学習を管理しています。それは、登校した瞬間から帰るまで、教師が事細かく説明や指示、口出しをするという形でなされる管理のことです。
教師のリーダーシップが、「過保護、過干渉」型になっていると表現してもいいかもしれません。社会の変化により、子どもたちに失敗をさせることが許されなくなりました。保護者の目も厳しくなりました。よって、教師は子どもたちが迷わないように、間違わないように微に入り細にわたり、目を光らせ、指示をしなくてはならなくなりました。素直で従順な子どもたちほど、自分たちで考えなくなり、受け身になり、自ら発意して行動するようなことが少なくなりました。
2 鵜飼い型構造
学級集団は、教師と子どもたちの関係だけではなく、子ども同士がつながっている状態の方がより機能するわけですが、教師と子どものつながりの形成の段階で留まっている学級が見られます。すると、どんなに落ち着いていたように見えても、教師と個々の子どもしかつながっていませんから、担任が替わった途端に学級が荒れるということが起こりやすくなっています。
つまり、学級の人間関係が教師を鵜匠とした鵜飼いのようになっているわけです。これは小学校だけのことではありません。中学校でも、子ども同士の関係ができていないと、特定の教科で授業が成り立たなくなるということが起こります。鵜匠になれる教師の授業は成り立ち、それができない教師の授業は荒れるのです。いわゆる、授業崩壊の状態です。
学級集団の状態が「よいも悪いも先生次第」になっているのです。学級集団も人間関係でできていますから、ある程度、リーダーによって影響を受けることは致し方ないことです。しかし、それが授業成立に影響を及ぼすほどになると、結局、不利益を被るのは子どもたちです。
3 教師満足優位型学級
学級の子どもたちの居心地の良さを測定するQ-U(河村茂雄、図書文化)という調査用紙があります。校内研修などでそれらを見せていただくことがあります。学校によって多少の違いがありますが、子どもたちの7割以上が居心地の良さを感じている満足型学級は、少数です。ほとんどの学級では、満足感を感じている子どもたちが3割から5割くらいで、満足度が高いとは言えない状況です。
しかし、だからと言って意識的に集団づくりの手立てがとられているわけではりません。目に見えて荒れていないので、授業づくりに多くのコストがかけられています。そして、小さな矛盾が積み重なり後半になるとしんどくなる学級が出てくることがあるのです。教師は「それほどいいわけではないが、そう悪くもない」と思っている状態なのです。これを教師満足優位型学級と言ったら言い過ぎでしょうか。
4 静かなる崩壊
2000年前後の典型的な学級崩壊は、「反抗型」、「なれ合い型」と呼ばれるものでした。前者は文字通り、子どもたちが教師に反抗的行動をします。「教師いじめ型」などと呼ばれることもありました。それに対して、後者は、なんとなくルールがなし崩し的に守られなくなり、なんだか楽しくやっているように見えますが、正義が通らなかったり、あたたかな関係が希薄だったりして集団として機能しない状況になっているものです。
それに加えて近年見られているのは、「静かなる荒れ」と呼ばれるものです。学習や活動に対して極めて低意欲な子どもたちが目立ち、そのなかで教師は孤軍奮闘しています。全員が着席をして、ノートや教科書を用意している姿も見られます。しかし、シラッとしたりダラッとしたりしていて、教室にメリハリや活気が感じられません。
後回しになる学級集団づくり
これらの状況は、単独で起こっているのではなく、全てつながっていると見ています
社会の変化や子どもの育ちの問題から、教師は子どもたちの学校生活の隅々まで口を出さなくてはならなくなりました。すると、教師が意図する、しないに関わらず、鵜飼い型構造の関係が強まり、子どもたちの、自分たちで判断し行動する力が弱まり、受け身になります。受け身の子どもたちは、ただ教師の提示する状況の中で、低い意欲や少ない充実感と共に、生活と学習を繰り返します。隅々まで管理された教室では、大抵の場合、大きな問題は起こりません。従って、手間のかかる集団づくりに敢えてコストをかけようとすることはなく、日々を流そうとするような学級経営も出てきます。
学力向上に注目が集まる中で、教師の関心は、どうやってテストの数値を上げるかに向けられがちになります。結果的に、学級集団づくりに取り組んだり、それを学んだりすることが後回しになってしまいます。指摘したような集団づくりにおける問題点に加えて、それを改善する取り組みの優先順位が上げられない状況があることも、5つ目の問題として指摘できるでしょう。
自治的な学級集団づくりは、こうした現在の学級集団に見られる状況を打開し、子どもたちの瑞々しいやる気を引き出すマネジメントの一つの方向性として期待できるのです。
次年度の集団づくり戦略計画の作成はお進みですか。
心強い味方として「学級を最高のチームにする極意シリーズ」があります。私が基本的な考え方を示した理論編と、全国の気鋭の実践が実践編を書きました。実践家の皆さんには、その実践を支える考え方と失敗しそうなポイントとそのリカバリー法も示していただきました。従って、「その人だからできる」という域を超えて広く汎用性があることでしょう。
本シリーズのラインナップは、集団のセオリーに則って構成されています。皆さんのニーズのどこかにヒットすることでしょう。
学級集団は、どんなに良好な状態であろうともその殆どが4月後半から6月にかけて最初の危機を迎えます。
子どもたちがいろいろなメッセージを発してくる頃です。それを如何にうけとめてそれを彼らの成長につなげるかが危機を回避し、学級を機能させるポイントです。
最初の危機を乗り越え、2学期以降の経営が安定するためは、教師と子どもたちの個人的信頼関係を如何に築くかにかかっています。メンバーとの個人的信頼関係の強さが、リーダーの指導力の源泉となります。リーダーとの強い絆が、子ども同士の積極的な協働のエネルギーとなります。技術論だけでは、子どもたちは主体的に行動しないのです。子どもたちのやる気に火を付けるのは、個人的信頼関係の構築にかかっています。
学級はルールから崩れます。また、子どもたちのやる気に満ちた集団は、教師のパフォーマンスでも声の大きさでもなく、ルールの定着度によります。良い学級には、良いルールがあります。そのルールの具体と指導法がギッシリです。
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