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新しい理科の目標では、「実感を伴った理解」が示されています。これは、自然に親しみ諸感覚を働かせながら、問題意識を高め、感性を高める体験を通して理解を図ることや、見通しをもって観察、実験などを行う問題解決を通して理解を図ること、自然を見直したり生活とのかかわりを感じたりするなど活用を通して理解を深めることと考えられます。理科の目標にある「実感を伴った理解」などが意味することを十分に踏まえて、理科の年間指導計画、日々の授業の指導計画をたて、学習指導の工夫・改善を図ることが大切です。
「実感を伴った理解」を実現するためには、問題解決を充実することが必要不可欠です。理科の授業で問題解決を展開していくには、あらかじめ子どもがもっている自然の事物・現象についてのイメージや素朴な概念などを出発点としながら、その過程で意味付けや関係付けが行われることが大切です。学習後に、子どもの自然の事物・現象についての新しいイメージや概念などを科学的に更新していくのです。そのためには、子どもが、自然についての理解を深めるだけでなく、自然に対する心情を豊かにしながら、問題解決の過程を通して科学的に追究することによって自然についての実感を伴った理解へ高めていくことが大切です。
理科の内容は、A区分「物質・エネルギー」とB区分「生命・地球」といった二区分に再構成されました。それぞれの区分の特徴をとらえ、授業に臨むことが大切です。
A区分「物質・エネルギー」は、「エネルギー」や「粒子」といった科学の基本的な見方や概念を柱として内容の系統性をもたせて、子どもがもつ見通しに対して子ども自身が科学的な手続きのもと実験を進め、結果について考察し、結論を出していく過程を重視しています。今回、新内容として3つ、「風やゴムの働き」、「物と重さ」、「電気の利用」が追加されました。「風やゴムの働き」は科学的な体験の充実を、「物と重さ」は物質概念の定着を、「電気の利用」は、持続可能な社会への対応をねらいとしています。また、B区分「生命・地球」は、「生命」や「地球」といった科学の基本的な見方や概念を柱として内容の系統性をもたせて、子どもが自然に親しむことから醸し出された問題意識をもとに視点をもちながら、子ども自身が諸感覚をフルに働かせて観察を進め、観察の結果を文字や図で表現し、その表現をもとにしながら考察し、結論を出していく過程を重視しています。今回、新内容として3つ、「自然の観察」、「人の体のつくりと運動」、「月と太陽」が追加されました。「自然の観察」は自然体験の充実を、「人の体のつくりと運動」は人体概念の定着と生命尊重の態度の育成を、「太陽と月」は、空間概念の定着をねらいとしています。
子どもの苦手な意識を払拭し得意な意識を育てるには、子どもの学習意欲に気を配りながら、興味・関心を高める指導の工夫改善を図ることが大切です。子どもが意欲的に学習を進めるには、「自分の存在を認められる」、「効果が目に見えて表れる」、「自分が成長する」といったことを学習者である子どもが自覚することが重要です。子どもが何に興味・関心をもち、何に向かって動こうとしているのかなど、「子ども理解」に徹しましょう。こうした教師の子ども理解の深さと広さが、子どもが、理科に対して得意な意識をもてるような授業づくりの出発点となります。子どもは、教師のテクニックとしての言葉では動きません。教師の愛情と信頼関係に裏打ちされた言葉で動くのです。
理科は、子どもが大好きな教科です。こうした理科に苦手な意識をもつ先生方が多いことが、小学校理科の大きな課題です。まずは、先生ご自身が、自然を観察したり、実験を行ったりするなどの体験を深め、理科を楽しんでください。こうした理科体験をもとにしながら、理科教育の要である「教材研究」、「子ども理解」、「指導計画作成」に取り組んでください。そのために、本書が少しでもお役に立てば幸いです。