- 著者インタビュー
- 算数・数学
礒田先生:個別に算数授業づくりのコツを記した本は多いのですが、そのコツを授業づくりの局面ごとに体系的に項目立てて整理した本は意外に少ないと思います。本書のチェックリストには教師用、子ども用があり、自分が今何ができて、何ができていないか、次に何に挑戦すれば授業がよくなるのか、チェックしながら体系的にわかるようになっています。このチェックリストは、算数授業が実は苦手だった大曽根小の先生方が整理したものです。
礒田先生:算数では、わかること、できることは大切です。同時に、学び方を学ぶことが求められます。例えば、計算の意味がわかり、できることは大切ですが、昨今では計算の「仕方を考える」ことが求められています。問題解決授業では、教科書の計算の仕方以外の多様な計算の仕方を子どもが工夫することを求めます。多様な考えが出されれば、そのよさを比べ、よりよい考えを見いだそうと話し合います。価値ある考えを見いだす活動を振り返る中で、算数の学び方や算数的活動の仕方も教えられます。問題解決授業でこそ、学び方、考え方が教えられるのです。
野淵先生:比較検討の指導に不安を感じる先生が多く、大曽根小でも長い間課題となっていました。しかし、チェックリストで具体的な指導ノウハウが共有できるようになると、比較検討はすぐによくなっていきました。具体的に気を付けるべきことは、
・「板書計画」での教材研究を通して、取り上げる考えや一般化に至るキーワードをあらかじめ予測する。
・比較検討ステップや期待する話し合い(アーギュメント)を計画する。
・発表シートの記述が焦点化され、集団思考の資料となるよう支援する。
・子どもの発表力とともに「質問力」を育てる。
といったことです。
野淵先生:一見活発そうに見える授業が、実は得意な児童と教師の間だけの話し合いになっている。これもまた大曽根小の課題でした。すべての子どもがのびのびと考えを表現できるようにするために、次のような初発段階、入門段階の具体的な指導ノウハウをつくり上げました。
・学び方の基礎となる「学習スキル」を高めるようにする。
・ハンドサインを用いて自分の発言の意思表示をできるようにする。
・机間指導でみとった児童を意図的に指名するようにする。
・ペア、グループ、友だちとの相談タイムで伝え合いの機会を増やす。
礒田先生:チェックリストを手に授業づくりに取り組むと、自分の授業がよくなっていくことが実感できます。「板書計画」と子どもの「学習スキル」のチェックリストが、子どもの学力を伸ばす基本であることに気付くことでしょう。算数の授業公開が楽しみになりますよ。
野淵先生:「算数の時間に考えるのが楽しい!」「みんなで話し合うのが楽しい!」。こんな子どもの声がよく聞こえるようになりました。教師が変われば授業が変わり、授業が変われば子どもが変わります。大曽根小の若い先生も授業がぐんぐんうまくなりました。負けられません!