著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
すべての子どもの特性を理解した特別支援教育を!
関西国際大学教育学部教育福祉学科准教授中尾 繁樹
2009/8/6 掲載

中尾 繁樹なかお しげき

関西国際大学教育学部教育福祉学科准教授、大阪教育大学非常勤講師、神戸総合医療専門学校非常勤講師、文部科学省「学習指導要領改善のための調査研究」委員、日本小児科学会「学校保健と心の問題委員会」専門委員、日本LD学会特別支援教育士S.V.、神戸市、西宮市、宝塚市、河内長野市、大阪市他専門巡回指導員。主要著作に、『<先進事例集>地域の特色ある特別支援教育4 神戸市発!特別な配慮の必要な子どもへの具体的指導内容と支援策』(柘植雅義監修・中尾繁樹編著、明治図書、2008)がある。

―『「特別」でない特別支援教育』シリーズはすでに1巻も刊行されていますが、このシリーズ名にこめられた思いとはどんなものでしょうか?

 「特別支援教育」という解釈を大半の先生方が、「特別な子どものための特別な教育」ととらえている場合が多いようです。それなら従来の障害児教育となんら変わっていません。「特別支援教育」の本来のねらいは特別な支援ができる先生方を育てる教育なのです。
 すべての先生がすべての子どもの特性を理解し、実践することで「特別ではない特別支援教育」になるのです。「困った子ども」ではなく「困っている子ども」のサインを見逃さない専門性をつけるための援助になればと思います。

―今回刊行された2巻では、「自立活動」についてどのような内容が紹介されていますか?

 今回学習指導要領で改訂された「自立活動」の内容を中心にわかりやすく解説し、様々な障害種別の特別支援学校で実践されている「子どもを中心とした自立活動」の最新事例を紹介しています。重度の子どもへの身体の動きやコミュニケーションの指導、発達障害や知的障害の子どもへの感覚運動の指導等を「人間関係の形成」との関係でまとめています。

―通常の学級に在籍している発達障害の子どもに、「自立活動」的な指導をどのように取り入れていけばよいのでしょうか?

 「自立活動」は本来、特別支援学校、特別支援学級、通級指導教室で教育課程上組み込まれるものです。通常の学級では教育課程上の位置づけはできませんが、内容を参考に教科の学習等での配慮は十分できます。例えば基本の運動等で不器用な子どもたちに対して、ボディーイメージを高める指導をしたいときにマットや鉄棒だけでなく、特別支援学校で使用している遊具の工夫や運動の手順をカード化し流れを構造化するなど、「環境の認知」「身体の動き」の内容を参考に、プログラム化することができます。

―特別支援教育が導入され、一人ひとりのニーズに合った指導がより一層求められますが、具体的にはどんな指導が必要なのでしょうか?

 一人ひとりのニーズに合った指導をするためには、子どもの特性を知ることが大切です。対処療法として、国語や算数等でスモールステップの指導を行うことも大切ですが、子どもたちのできない背景、困っている背景を知ることで、はじめてニーズに合った具体的な指導方策が出てきます。そのひとつのベースになっている「からだ」と「こころ」の基盤を整えることが今必要だと考えます。幼児から青年期にかけて各ステージで必要な「からだ」をバランスよく育てることで、二次的な歪みを予防できると思います。

―最後に、全国の特別支援教育に携わる先生方へ一言お願いします。

 すべての先生が子どもの困っているところを理解し、二次的な問題を引きおこさないように予防し、精度の高いわかる授業を行うことが大切だと思っています。そのためには、「なぜこのような行動をするのか」の背景を知り、それを踏まえた上での子どもがわかりやすい実践が必要になります。「わからない」、「困った」時には一人で悩まずに「one for all, all for one」が大切です。本シリーズはその「困った」「どうすれば」の解決のために子どもの理解の仕方と具体的指導法を「インフォーマルなアセスメント」「自立活動」「不器用」「就学前」をキーワードに構成しています。

(構成:木山)

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