きょういくじん会議
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神奈川の公立高校で始まる模擬投票―シチズンシップ教育
kyoikujin
2009/12/25 掲載
シティズンシップの教育思想

 11月29日の産経新聞の記事によると、神奈川県の全ての公立高校で、2010年夏の参院選にあわせた模擬投票を実施するとのこと。これまで学校ごとに独自の判断で行うことはあっても、県の公立高校全体で模擬投票に取り組む、というのは全国初だそうです。

シチズンシップ教育とは

 この模擬投票は、神奈川県知事である松沢成文知事が積極的に取り組むよう県の教育委員会に要請してきた、シチズンシップ(シティズンシップ)教育という教育の一環。近年日本だけでなくイギリスなどの欧米でも取り組まれだしている考え方で、訳せば「市民性の教育」となり、その名の通り、子どもたちが成長して大人になり、社会に参加する際、市民(社会の一員)として積極的に考え、動くことができるようにするための教育です。

 神奈川県では、今回発表された県全体での取り組みの前にも、07年には試験的にシチズンシップ教育実践指定校を定め、社会・政治、経済・金融、モラル・マナーといった各分野での活動を検証してきたとのこと。前述した産経新聞の記事によれば、今回発表された神奈川県のシチズンシップ教育は、

(1)政治参加教育
(2)司法参加教育
(3)消費者教育
(4)道徳教育

の4つにまとめられます。模擬投票は(1)の政治参加教育にあたり、(2)は模擬裁判、(3)は金融トラブル、(4)は交通道徳などがそれぞれ一例として挙がっています。

成人年齢の再検討

 18歳を成人とみなすかどうかという議論が近年活発にされていますが、8月3日の記事でもご紹介したように、18歳成人は賛否両論があって判断が難しい部分かと思います。反対をする大人の中には、18歳はまだ未成熟な時期ではと不安点を挙げる人がいますが、もし実際に法律の改正などが行われて18歳が成人ということになれば、まさにそのとき17、18歳くらいという当の本人たちが一番不安を感じるかもしれません。

 もしも18歳成人の賛成に見られるように、「より早い時期での大人となること」を求めるのであれば、大人とはどのような義務があるのかを伝えたり体験させたりすることこそが必要なのでは? そう考えると、神奈川県のシチズンシップ教育には、ただなんとなくというレベルで終わることなく、他県などへのモデルケースとなるようなものになっていけるのか、注目したいところです。

この記事は、『きょういくじん会議』の記事を移転して掲載しているため、文中に『きょういくじん会議』への掲載を前提とした表現が含まれている場合があります。あらかじめご了承ください。
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