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教師は、子どもたち、保護者や地域の方々、別の先生方というように、様々な立場の人たちとコミュニケーションをしていかねばなりません。また、子ども達との接し方でも、授業、課外活動、生活指導、というようにさまざまな局面があります。
そこで、教師が持っておくべきコミュニケーションの力を「教師コミュニケーション力」と名付けました。第一章でも取り上げていますが、教師コミュニケーション力をいかに高めるかは、教育の現場において、決定的に重要なことです。今回、具体的な場面に対応するための考え方や知識を、忙しい先生方にも負担なく読んで頂けるよう、コンパクトにまとめました。
なお、本書は大学での「教職実践演習」などのテキストや参考書としても使って頂けます。
申し訳ないのですが、授業でのコミュニケーションのポイントはこれこれだ、などと一文で簡単に言えるものではないと思います(笑)。ただ、一つ強調して申し上げておきたいのは、最近強調されている「言語活動の充実」の鍵の一つは、「コミュニケーションの活性化とその仕掛けづくり」だということです。授業において、学習者どうしのコミュニケーションをいかに活性化させるのか、教師と学習者みんなの双方向的なやりとりをいかに進めるのか、――生き生きとした学びの場を考えるには、コミュニケーションという観点が重要だと思うのです。超ベテランの先生方や学会でご活躍の先生方のいろいろな「秘訣」をぜひ読み取って頂き、明日の授業に役立てて頂きたいと思います。
いじめ問題やそれにかかわる自殺、校内での殺人事件や死亡事故など、教育の現場では、心が痛くなる出来事が次々に起こっています。先生が児童生徒にどう接するのか、さらに、教師間でいかに連携していくのか、といったことは「命」にすらかかわるのです。どんな先生にとっても、こうしたことは他人事ではありえません。
そこで、小学校と中学校といった校種ごとに、具体的に、どうすればよいのか、どう考えるべきかをベテランの先生方に書いて頂きました。広く知られるような事件に直接対応なさった(なさっている)先生方の血のにじむようなご経験から、多くのことを学んで頂けるものと信じています。
保護者との協力体制は、子どもの育ちにとって不可欠なことです。しかし、現実には、なかなかうまくいかないこともあるようです。希望に燃えて教壇に立った新任の先生が、保護者とのコミュニケーション上のトラブルに疲れ果てて退職してしまったといった話も聞くことがあります。保護者とのコミュニケーションは、教員養成の教育課程の中ではほとんど触れられないようですが、教師コミュニケーション力として、非常に大切な要素です。
では、どうすれば保護者の信頼を得られるのか――ベテランの先生方に伺うと、そこにはコミュニケーションの上での、「勘所(かんどころ)」というものがあるようです。子どもの問題行動に関して家庭に電話連絡する場合でも、ちょっとした言い方の違いや、どんな一言を言うかで、大きく印象が違うのです。通知簿のコメントの書き方ひとつをとっても、そこには信頼関係を築いていくための注意点があります。コミュニケーションを本当に有効なものにしていくためには、具体的な表現についてもしっかり考えることが有効です。ぜひベテランの先生方のアドバイスを生かしていただきたいと願っています。
ちょうど、今は先生方の世代交代の時期でもあります。しかし、どんどん多忙化する学校現場では、ベテランの先生と新任の先生とのコミュニケーションの機会も大きく減っているとうかがいます。こういう時はどうすればいいのか、といったことを、新任の先生はなかなか相談できないと聞きます。
また、世代ごとに、考え方や気質も少しずつ変わってきています。教育実習生も、子ども達とのコミュニケーションをどうとっていけばいいのか、必要以上に戸惑っているようですし、実習生を指導する先生方にも別な意味での戸惑いがあるようです。
手前味噌かもしれませんが、そんな状況の中だからこそ、現在、本書のような本が本当に必要ではないか、と思っています。本書を教師コミュニケーション力を高めるために役立てて頂ければ本当にありがたいと思います。