拡大教科書の普及のため教科書のデジタルデータを提供することについて、5月26日に審議会が開かれた。その議事録(概要)が、7月10日、文科省のHPに掲載されたので、その内容をみてみよう。デジタルデータの提供で拡大教科書作成が一気に進むかとも思われたが、課題は色々あるようだ。
デジタルデータ提供の背景
最初にデジタルデータの提供という話の背景を確認しておくと、先日の記事でもお伝えしたように、現在の拡大教科書の作成はボランティア団体に頼っているというのが現状だ。そこで少しでもその作業を軽減するために、教科書のデジタルデータ(今はパソコンでレイアウトするのが普通)を提供できれば、それを材料にして拡大教科書づくりができることになる。たとえば、デジタルデータにはテキストデータ(文章のデータ)も当然含まれるので、最初からもう一回タイプする手間を省略できる。
ところが議事録をみると、そう簡単には事が運ばない事情が色々とあるようだ。
レイアウトソフトの問題
教科書会社がパソコン上でレイアウト作業を行うとき、「インデザイン」や「クウォーク」といった専門的なソフトが用いられる。一方、ボランティア団体はワードや一太郎などのワープロソフトを使用するケースが多く、せっかくのデータも右から左へとは流用できない部分がある。特に、算数・数学の数式などは、ワープロソフトでの扱いは難しいようだ。
著作権との関係
国語教科書掲載の作家の文章から、その他教科の写真や図版の著作権まで、解決されなければならない問題は多い。この審議会では、著作権法を改正して拡大教科書への使用に対しては著作権制限規定をかける案なども提案されている。現在も著作権法33条の2で拡大教科書作成のための複製は認められているが、これは紙を念頭に置いた規定なので、デジタルデータも含めた包括的な規定にする必要があるかもしれない。
議事録には、ボランティア団体が活用しやすい統一フォーマットを定めているアメリカの事例なども紹介されている。デジタルデータ提供の課題が少しでも解決され、拡大教科書のさらなる普及につながることを願いたい。
- 拡大教科書普及促進に関する法案で与党、民主が合意(2008/6/3)
http://www.meijitosho.co.jp/eduzine/news/?id=20080266
単純な拡大だけならそんなに手間もかからないはずですし。
そうなのですか。そうすると完全に再編集になるので、データを提供したとしてもかなりの手間になりそうですね。現状手入力しているのであれば、テキストデータをもらえるだけでかなり助かりそうではありますが。